超訳:ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材を受ける蔡霞氏【後編】(その2) 「中国の体制が変革されなければ、米中対立は深まるばかり」

※以下、【後編】(その1)からの続き

記者:習氏が独裁を強めているのは、紅二代や中国共産党を守るためだという意見もあります。中国が民主化したら中国共産党は政権を退くことになるでしょうから。それにもしかしたら、これまでにやってきたことの責任を問われるかもしれませんし。これについては?

蔡霞:複数の角度からの分析が必要です。まず、「紅二代」です。親が党の有力者で、政権をとったあと特権階級になったから、自分たちもその特権を維持しようとする。これは、あると思います。ですが、志のある親、真に民族の未来を考えて献身的にがんばった親の教育を受けた人たちは、自分たちが政権党であるかどうかにこだわりません。中国を現代化させ、民主的な政治を実現するには、政権は人民のものであるべきだと考えています。特権にすがりついている人たちばかりではないのです。

記者:アメリカが中国共産党と中国人民とを区別しているのはいいことだとおっしゃいましたね。体制内で育った学者として、米国の対中政策に他になにか助言はありますか?

蔡霞:まず、習氏とそのマフィア的グループを、9000万の党員と区別することです。中国共産党をつぶすには9000万の党員をみんなつぶさないといけない、というのは現実的ではありません。実際に物理的に消してしまうなんて大虐殺になりますよね。ですから、「殻」を破り、制度を撤廃し、体制を変革する一方で、個人の権利を尊重・保障すべきです。で、具体的にどうしたらいいか。私はこう考えます。中国共産党の中枢の人たち、彼らは党がやってきたことの責任をとるべきです。法的に裁かれるべきです。二つ目の助言は、中国共産党の集権体制の実態をあばくことです。ファシズムはヒトラーとともに終わり、旧ソ連・東欧諸国の体制は旧ソ連・東欧諸国とともに終わったと考えられがちです。中国は、改革によって中国の特色ある社会主義に切り替え、市場経済を導入して前に進んでいるから、全体主義なんかじゃない、と思われがちですが、とんでもない。今の集権体制は、旧ソ連やヒトラーのころのものよりたちが悪いのです。

記者:中国の変革は、最終的にはどういった力によって成し遂げられるとお考えですか? 内部の力では立憲民主は実現できない、外部、とくにアメリカの力に頼らないと、という意見があります。どうですか?

蔡霞:ハンティントンの『第三の波』を思い出しますね。ハンティントンは、民主化には五つの要因があると書いています。その一つが、外部からの影響です。以前読んだときには、小さい国なら当てはまるが、中国のように大きい国には当てはまらないと思いました。今はちがいます。外部の力はとても重要な役割を果たしうると思います。それが決定的かつ根本的な変革をもたらすかはわかりません。中国の場合、政治的変化における複雑度が極めて高いですから。ただし、外部の力が内部の力を動かして、もしかしたら外部と内部が協力することも可能でしょう。もし内部に分裂があり、習氏が退く準備、中国共産党が自分から現制度を撤廃する準備がととのったら、われわれはみんなで話し合い、平和的転換をはかればいいでしょう。外部は手順通りにサポートしてくれるといいですね。現在では、いろいろ試しながら制度を模索する必要はなくなっていますから。人類には、政治的転換に関してすでに豊富な経験があります。アメリカをはじめどの国も、中国の大きな混乱を望んではいないはずです。もしそんなことになったら、災難です。中国だけでなく世界にとっても。14億人ですよ。中東や北アフリカなどイスラム世界からの難民のことを考えてみてください。ヨーロッパ全体にどっと押し寄せましたよね。あのようにならないように、各国や国際機関が手立てを考えないといけません。中国の体制内部との意思疎通・協力をはかり、対話のルートを確保して、みんなで平和的に話し合えるようにすることです。これは可能だと思います。ですが、外部の力だけに頼るやり方は無理だと思います。


・・・【後編】(その3)に続く


(下は、このnote記事をもとにした私のYoutube動画です)


※ ラジオ・フリー・アジアのYouTube動画(中国語)


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