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シェイクスピアのバラたち。~戯曲の中のバラと、登場人物の名前を冠するバラ~①

最近、シェイクスピアの戯曲を読み返すことが多い。バラの名前にまつわる物語を綴っているので、改めてシェイクスピアの中に登場するバラについて思いを巡らせている。戯曲には様々な植物が登場するが、中でもバラの登場場面は多く、一説には全作品中に70から100を数えるという。興味深いのは、シーンを彩るというよりは、さまざまな比喩として植物が使われていること。

私がシェイクスピアの戯曲に興味を持ったのは、劇作家ゆかりの地を訪れ、その時代の息吹にふれる機会があったからだ。最初はシェイクスピア俳優で、映画出演でも知られたジェレミー・アイアンズの撮影で、イギリス、ストラトフォード・アポン・エイボンにあるロイヤル・シェイクスピア劇場を訪れた時のこと。楽屋でポートレイトを撮影の後、彼の招待で2本のシェイクスピア劇を見ることができた。その劇体験が強烈で、今もいくつかのシーンを憶えている。
(この時のことは、2020年7月30日「ジェレミー・アイアンズ ~撮影ノオト~」に詳しく綴っています。)

劇場のある町はシェイクスピアが生まれ育ったところで、今も彼や妻のアン・ハサウェイの生家が残っている。劇場のショップで手に入れた『シェイクスピアの花々』という小冊子で、劇中に登場する植物の多彩なことを知った。生家の庭には、そうした植物が植栽されているという。だが残念なことにその時は真冬で、一面の雪景色。エイボン河も凍る季節だった。

長い間、その町を訪れることはなかったが、わが家のバルコニーで’’ウィリアム・シェイクスピア2000’というバラが咲くようになって、改めてイギリスでの心残りが思い出された。初夏のストラトフォード・アポン・エイボンを訪ねたいと、ある年、思い切って旅に出た。

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