コミュニティROI出ない問題、その解決策はKPI設定にあり
坂口さん(@jsakaguc2010)、長田(@SsfRn)さんと進めている「コミュニティマネージャーズ」プロジェクト。
前回はコミュニティの話だったので、今回はコミュニティのマーケティング活用の話です。
先日、熱狂ブランドサミット2018に登壇しましたが、短期的な成果が出にくいコミュニティのROIをどう考えるのかという問題が提起されていました。
成果が見えないことにマーケティング予算は使えない。
でも、成果が見えるには時間がかかる。
そこにコミュニティマーケティングの難しさがあるのは事実です。
今日はこのコミュニティROI問題をKPI設定で解決する方法を書きたいと思います。
コミュニティ運営をマーケティングと思わない
まず、区別して考えるべきはコミュニティ運営はコミュニティマーケティングではないいう点です。
CMC_Meetupを主催されている小島さんのこのスライド18ページ目にまとめられていますが、
コミュニティ運営(マネジメント)
目的:コミュニティ維持・フォーカス
・リピーター比率
・製品へのフィードバック
・リレーションシップ
コミュニティマーケティング
目的:マーケティング(共感者増大)
・新規参加者比率
・外部へのアウトプット数
・自走化
コミュニティを運営することと、コミュニティを活用してマーケティングに活用することは異なります。コミュニティを作ってそこにファンを集めればマーケティング成果を生み出せると思ってはいけないのです。
そうではなく、「コミュニティを育てる」フェーズと「マーケティングにコミュニティを活かす」フェーズを分けて考えるのです。
コミュニティの3段活用
コミュニティマーケティングを始めようと、コミュニティを作る時、目標を定義して戦略を立てようとします。
しかし、コミュニティがない状態では戦略が立てられない。
戦略とは「ゴール」と「現状」があって、その間にある課題を埋めるために存在します。
でも、マーケターはお客さまと実際に会っていないことが多いので、彼ら/彼女らがどんなニーズや課題を持っているのか、手触り感がありません。「現状」がわからない。
また、コミュニティはLTV(LifeTimeValue)向上や友だち紹介など、さまざまなゴールを設定できるため、「何をゴールにするか」で戦略も当然変わります。
つまり、「現状」も「ゴール」を把握できていない状態では、戦略も目標も立てられないのです。
だからこそ前回の記事で書いたとおり、低予算でできるだけ小さく、「手触り感」が感じられる程度の取り組みから始めるのがおすすめです。
予算の許可を上司に求めても、わからなくて判断できません(笑)
コミュニティをマーケティングに活かす
実際のユーザーに会って話して、コミュニティを作ってみると、「こんなマーケティングに活かせるんじゃないか?」と気づくことができます。
例えば、面白いエピソードや使い方があればそれをオウンドメディアなどで伝えることができるかもしれない。それを新規顧客獲得に活用できるかもしれません。
コミュニティ単体ではなく、コミュニティをPRや他マーケティング施策と組み合わせる時にマーケティング効果が出るのです。
コミュニティというよりも一人のファンとの事例ですが、10分どん兵衛は大変話題になったキャンペーンです。
どん兵衛のファンで、どん兵衛にお湯を入れて10分待って食べると美味しく食べられることを発見したマキタスポーツさんに対して、日清食品が「10分どん兵衛を作らなかったことをお詫び」するキャンペーンサイトを制作しました。
これをコミュニティブランド戦略で考えてみると、
コミュニティロイヤルティ:どん兵衛のファンのマキタスポーツさん
コミュニティ体験:どん兵衛にお湯を入れて10分待って食べると美味しく食べられる
これだけでは、10分どん兵衛が話題にはなりません。
コミュニティイメージ:10分どん兵衛という食べ方を知らかったことをお詫びして、マキタスポーツさんとの対談を行うウェブサイトを制作
コミュニティ認知:サイト自体が話題化して、自分も10分どん兵衛を試してみというSNS投稿がバズる
かかった費用はマキタスポーツさんの出演料とサイト構築費用程度。
それだけで様々なメディアやSNSに取り上げられました。
こんなにROIの高いキャンペーンができたのはマキタスポーツさんという一人のファンを他マーケティングとうまく組み合わせたからでしょう。
コミュニティは規模を求めるべき?
よくある間違いが、KPIをコミュニティメンバー数にしてROIを達成しようとすることです。
例えば、コミュニティメンバー100人、LTV:1万円
100人×1万円=100万円
として計算します。これを1,000人にすれば1,000万になると考えがちなのですが、だいたいうまくいきません。人数が増えると濃度が薄まるので、人数増加と比例して、LTVも下がってしまうからです。
特にB2CのマーケティングはB2Bマーケティングに比べて広いターゲットを対象とします。何十万、何百万人をターゲットとしなければなりません。もうコミュニケーションできる人数を超えています。
コミュニティの規模は必要ないのです。10分どん兵衛の事例のようにたった一人のファンでも、他マーケティング施策との組み合わせで高いROIがでます。
コミュニティマーケティングでROIを達成するには、コミュニティの規模感は必要ではなく、どれだけ他マーケティング施策と組み合わせられるかが重要なのです。
だから、マーケティングフェーズのKPIは、コミュニティ内のメンバー数などではなく、PR効果やマーケティング施策貢献度になるのです。
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