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シナリオ 「家族の定義」#02


○飯島家・居間

作業着を着て仕事に行く準備をしている浩二。
テーブルに一人分の朝ごはんが用意され、メモ書きが添えてある。
【京都に行ってきます。】
朝ごはんの前に座る浩二。

浩二「(手を合わせて)…いただきます」

○京都・鴨川の橋の上
橋の上から鴨川の写真を撮る絵美。

 ○京都・店が並ぶ道
街の建物や風景を写真に収める絵美。
人力車や観光客で賑わっている。
シャッターを押すがカメラが反応しない。
絵美、辺りを見渡す。
近くの階段に座りフィルムを取り替える絵美。

絵美「…よし」

勢いよく立ち上がり顔を上げる絵美。
ふと目線の先に古い喫茶店がある。
引き寄せられるように入って行く絵美。

 

○喫茶店
落ち着いた雰囲気の古い喫茶店。
ソファに座る絵美、メニューを眺める。
店員が注文を取るため待っている。

絵美「…抹茶パフェ、ひとつ」

 ○ガラス工房・外観

 ○ガラス工房
木で出来たテーブルとイスが置いてある小さな作業場。
テーブルの上には、小さなガスバーナーやペイントの道具、色とりどりのガラスのコップや瓶に入ったガラスのビーズが置かれている。
女性客や子供連れの家族がガラスビーズのブレスレットを作ったり、コップに模様を書いたりしている。
作業員たちが見回り作り方を教えている。
浩二、壁際に立ち、小さい女の子を連れた親子が楽しそうにコップに模様を書いている姿を眺めている。

○飯島家・居間(回想)
テレビの天気予報、全国的に雨。
テーブルには、食べ終わった皿やおかずの残り。
倒れたコップからはお茶がこぼれてテーブルから滴り落ち、畳を汚している。
テレビの方向を向いて座っている優子、髪の毛で表情が見えない。
ネクタイを緩める浩二。反応しない優子。
部屋の様子を見てため息を付き、倒れたコップを元に戻す浩二。
10月のカレンダーの隣にはかちかちと音を鳴らす時計。
時刻は19時を過ぎている。
浩二、優子を見ていらだった様子。
まったく動かない優子。
浩二、優子の腕を掴む。顔をあげる優子。
優子の顔を見て驚き動揺している浩二。
浩二、先ほどより焦った様子で腕を掴み、優子を立たせようとする。
が、優子勢いよく浩二の手を振り払う。
優子の腕がガラスのコップに当たり・・・

 ○ガラス工場
パリーンとガラスが割れる音。
我に返る浩二。
先ほどの小さい女の子が悲しそうに割れたコップを見つめている。
粉々に割れたコップ。
近くにあった箒を取り駆けつける浩二。
女の子の母親が作業員に謝っている。

女の子「(泣きだしそうな表情で)ごめんなさい…」

浩 二「…大丈夫だよ。怪我してない?」

女の子「うん…」

箒で割れたガラスを片付ける浩二。ほかの作業員も手伝う。
片付け終わり、箒を戻し新しいコップを持ってくる浩二。
浩二、女の子に目線を合わせしゃがむ。

浩 二「どうぞ」

コップを受け取り、嬉しそうな女の子。

女の子「ありがとう」

やさしい表情の浩二、自分の手を見つめ握り締める。

#03へ続く

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