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『極私的ライター入門』

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ライター歴36年の私が約20年前に自分のサイト(すでに消去)に載せていた「ライター入門」を、少しずつ再録していきます。 時代の変化で内容があまりに古くなっている部分は、適宜アップ…
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2022年4月の記事一覧

「1時間で1200字」がプロのスピード

キャリアを積めばおのずと速くなる 福田和也さん(評論家)の『ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法』(PHP)という本がある。タイトルに謳うくらいだから、著者自身、「ひと月百冊読み、三百枚書く」ことが「スゴイこと」だと認識しているのだろう。 しかし、ライターの立場から言わせてもらえば、「百冊読む」ほうはともかく、月産400字300枚くらいはプロのライターならあたりまえにこなす量である。300枚といえば平均的単行本1冊分相当だが、ライターなら、正味1ヶ月あれば1冊の本が書けるも

ライターに立ちはだかる「40歳の壁」

※20年前――つまり私自身が「40歳の壁」を目前にしていたころに書いた文章をサルベージ。 40歳がライターの“分岐点” 周囲を見渡すと、40歳前後でフリーライターを廃業してしまう人が少なくない。社員編集者になる人、まったく畑違いの職種に転職する人など、パターンはさまざまだが、40歳前後での転身という時期は奇妙なほど一致している。 なぜ40歳なのか? 「不惑」を迎えて人生を考え直すということも少しはあるかもしれないが、もっと下世話な理由がある。40歳という年齢は、フリーラ

尾瀬あきら『みのり伝説』は、いまなお“最もリアルなライターマンガ”である。

#マンガ感想文 『みのり伝説』は、ヒット作『夏子の酒』などで知られるマンガ家・尾瀬あきらが、1994年から97年まで『ビッグコミックオリジナル』に連載した作品である。 主人公・杉苗みのりがフリーライターとして独立し、売れっ子になるまでの奮闘が、奇をてらわない素直なタッチで描かれている。 フリーライター・藤田千恵子のエッセイ集『愛は下剋上』(ちくま文庫)をベースに、多くの女性ライターへの取材もくわえて作られた物語はすこぶるリアルで、ストーリーマンガの形式を取った「ライター

駆け出しライターのころ

※2006年にブログに書いた「ライター業界の昔話」をサルベージ。それから十数年が経ち、状況は変わっている。変わった点は注記した。 「手書き時代」を知る最後の世代私がライターになったのは、1986年のことである(フリーになったのは翌87年)。 最近、いろいろな場面で、「昔に比べたら仕事が楽になったなあ」としみじみ思う。 私がライターになった80年代後半にはインターネットなどまだなく、ちょっとした調べものにもいちいち図書館などに出向かなければならなかった。いまならネットで1

ライターは「自分のことを書く仕事」ではない

「自分のこと」を書くなど10年早い!昔、コラムニストの山田美保子さんが、「フリーライターになりたがってる」若い女の子の急増について、コラムで憂えておられた(『SPA!』1991年2月6日号)。 山田さんのもとを訪ねるその手の女の子は、「なんでもやりますゥ」(=だから仕事を紹介して下さい)などと殊勝なことを言うくせに、「どんなものが書きたいの?」と聞くと、こんなことをホザくのが常であったという。 あー、いるいるこういうヤツ。女の子に限らず、男にもいる……と、私はうなずきながら