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鎮痛剤(NSAIDs)における排卵の影響

皆さまこんにちは。
みなとみらい夢クリニックの薬剤師です。

今回は、鎮痛剤(NSAIDs)の排卵抑制作用について
お話しいたします。

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排卵が誘発される重要なメカニズムは、
体内での急激なLH(黄体化ホルモン)上昇です。
これをLHサージといいます。
E2(卵胞ホルモン)の高い状態が数日続くと
LHサージが起こり、排卵が誘発されます。

図1


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ところが、排卵にはLHサージのみが関与しているわけではありません。

LHサージと並び、
プロスタグランジン※1の卵胞における上昇も、
重要な因子として排卵に関与しています。

※1プロスタグランジンは、アラキドン酸(脳や皮膚など身体全体に広く分布する脂質の一種)からシクロオキシゲナーゼという酵素を介して体内で生成します。プロスタグランジンは、D2・E1・E2・F2α・H2・I2など様々な種類が存在し、そのタイプによって生理活性も異なります。これらの中で特に排卵に関与するのが、プロスタグランジンE2・プロスタグランジンF2αと言われています。

図2png


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一方、鎮痛剤でもっとも一般的な非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)は、
痛みや炎症を鎮めるお薬として広く使用されています。

非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)は
プロスタグランジン生成酵素であるシクロオキシゲナーゼをブロックし、
プロスタグランジン合成を抑制するため、消炎鎮痛効果が発揮されます。

図3

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鎮痛剤(NSAIDs)が痛みのある部分だけに作用するのであれば
何も問題はないのですが・・・

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一般的にお薬を服用すると、
それは血流に乗って全身に作用します。

鎮痛剤(NSAIDs)を使用すると全身に作用し、
排卵前の卵胞にも届いて、
プロスタグランジン合成を抑制します。

つまり鎮痛剤(NSAIDs)の使用で
重要な排卵誘発因子の合成が抑制されてしまう
のです。

図4

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昨今、ドラックストアなどでも簡単に入手できる鎮痛剤(NSAIDs)。

すぐに効果が実感できるので、
どこかに痛みや炎症があるとついつい使用してしまいがちです。

しかし注意すべきことは、排卵が抑制される可能性があるということ。

実際に、鎮痛剤を常時使用している女性では、
その排卵抑制作用による一般不妊が認められたとする報告があります。

妊娠を希望している女性は、
医師の指示のもと鎮痛剤を使用する事が望ましいです。

※当クリニックは採卵前に、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)を使用して排卵を抑制することがあります。

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