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『バラ畑』を見にいく  diary

先週、ひさしぶりに車を運転した。
公共交通機関で行けなくもないけれど、些か不便な場所にその美術館はあった。
見たかったのは『バラ畑』の壁紙だった。

■ クレジット
アトリエ・マルティーヌ《壁紙「バラ畑」》1912年頃・パリ装飾美術館©️MAD,Paris

バラと畑はどこかアンバランスな響きがある。
庭、庭園、そんな言葉の方がしっくりくると思う。
田植えのように均等に並ぶバラをみると、自然に頬が緩んでくる。
何を考え、これを描いたのだろう?
バラに対する認識が、私のそれはと違うのかもしれないけれど、パターン化されると、高貴とか優雅とか、そういった言葉が浮かんでこない。
行儀良く生えていると言うべきだろうか?
なんとなく並べてみただけにも見えなくない。
途切れることなくバラが降っているのだ。
誰が、どんな部屋に、この壁紙を張るんだろう?
アクセント程度ならまだしも、四方を囲まれると落ち着かない気もする。
想像するだけで、笑いが込み上げてきて、なせか楽しい気分になる。
デザインの本質は人を幸せにすることだと、あらためて思ったりもする。

真ん中が『バラ畑』の壁紙

ミュージアムショツプで『バラ畑』のポストカードを探した。
「見てきたよ」と、叔母に葉書を書きたかった。
随分前にリタイヤしたけれど、彼女は長い間、テキスタイルの仕事をしていた。
植物のモチーフが好きで、現役時代の彼女のスクラップはすごかった。
ラッピングペーパーや、ポストカード、何かのラベル、などなど、ありとあらゆるモノを収集していた。
植物がモチーフになったデザインの全てがその対象だった。
『バラ畑』は、絶対に知っていると思う。
「見てきたよ」と伝えたら、なんて言うだろう?

帰り高速でサービスエリアに寄った。
車の中でテイクアウトのコーヒーを飲みながら、彼女のことを考えた。
『バラ畑』のポストカードは、置いてなかった。
ちょっと残念な気もする。
わざわざ電話するようなことでもないし、そもそも、私は電話が苦手なのだ。
その点、ポストカードは便利で性に合っている。
余計なことを話さなくていいし、相手の時間や都合に途中で割り込むこともない。

ひさしぶりの運転は疲れる。
コンビニのコーヒーも、ひさしぶりだった。
以前は仕事の移動が多く、その合間によくコンビニに寄った。
車の中でコーヒーを飲みながら、打合せの内容とか、その後の予定を頭の中で整理する。
なんでもないその時間が、私は好きだった。
遠い昔の出来事のような気もするし、つい昨日のことのようにも思える。

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