ポール・オースターのこと
今朝の朝刊でポール・オースターの訃報を知った。
この記事で私は彼の年齢を初めて知った。
ニューヨークの自宅で死去と書かれていた。
彼の居る場所はニューヨーク以外に考えられないほど、私の中で彼とニューヨークは同じ景色の中にあった。
『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』は、何度となく手に取った本だ。
特にその中のひとつは、ことあるごとに読み返した。
生活のすべてを手放し、テント生活を始めた女性の物語だった。
彼女のもとに猫は訪れただろうか?
うちの猫を見るたび、そんなことを思ったりした。
この本は二年前から娘に貸したままになっている。
彼女は帰省すると、私の本棚から本を借りていくことがある。
あの時、ポール・オースターが話題になったのは『スモーク』の映画からだった。
私の記憶は曖昧だったけれど、彼女はよく覚えていた。
何時だったか、お正月に家族で映画館に観に行ったことがある。
その時の映画『スモーク』は、私のチョイスだった。
理由は、ポール・オースターが脚本を手がけたから…
そんな話をしたことも、私は覚えていなかった。
確かにお正月は映画を観に行くことが多かった。
朝刊の映画一覧を見ながら、何を見ようかと相談したりしながら…
二年前のクリスマス、彼女はまた『スモーク』を見たという。
最初に映画館で観た時も、良い作品だと思ったらしい。
ただ、当時まだ高校生だったか、大学生だった。
あらためて観ると、本当に素晴らしい作品なので、今後、毎年クリスマスに見ることにすると話していた。
彼の小説はあまり記憶に残っていない。
私にとってポール・オースターは『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』で、そして『スモーク』だった。
家族であの映画を見たこと、そして何年も後になって、また娘が『スモーク』を見たことだった。
多分、私もまた『スモーク』を見るような気がする。
手もとに本が戻ってきたら、また彼女の物語を読むと思う。