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ないものねだり

スマホを脇に挟み、ズボンのベルトに手を掛けながら、「スタイルヒート EXTRA」に片腕を通さんとする。

手が3本あればストレスは激減されるだろう。
2本じゃ足りない。2本じゃ足りないよ。

そんなこんなを省みると、手が3本だったらノーストレスで今を迎えられていたのに、と思うことがしばしば……あったような。
だからこそ、芥見下々先生に惚れ直す。

ラスボス格の両面宿儺(呪いの王)の特徴かつ長所が、手が4本で口が2つなのだから。

ドラクエやFFにおける呪文や魔法の詠唱時間やその方法も、“強さ自体”に係ってくるでしょ?
というきめ細かさ。

確かに、「イオナズン」は「イオ」より破壊力があるが、「――ナズン」まで言い終えぬうちに反撃されれば元も子もないし、「かめはめ波」も「はっ(波ッ)」と放てるに越したことはない。
溜めとして、「掌印(技発動時の挙動)」も必須であるのなら、腕が多いことは極めて重要だ。
この辺り、“戦い”に関し虚実が過不足なく混ざり合っている――現代漫画、最高傑作の名著。

先人たちが、過去に積み上げてきたエンタメの上澄みを、上手に掬い上げている。
だから芥見先生を、プライドが邪魔をしてそれが上手く出来ない男性漫画家ではないという理由で、女性漫画家であると確信している(絵柄が“少年漫画好きな女子のそれ”というのもある)。
黒閃を宿儺の土手っ腹にブチ込んだ五条悟の右のパンチが、フォロースルー時に捩じり返されていたのは意味不明ではあったが(参考資料は何だ?!右ボディーの拳がコークスクリューブローのように捻られることなど無い)。
森川ジョージ御大がこれをやっちまった日にゃ、いよいよヤキが回ったかとボケ老人扱いされちまうだろう(ちなみにリカルド・マルチネス対伊達英二のラストを想起させるシーンもある)。

――と、脱線に次ぐ脱線で話が逸れてしまったが、果たして、手に持っていたものを一つ置けばいいものを、掴んだものは離したくないとそれが出来ないのは、プライドが邪魔をしているからか――。

つまり、“スマホを脇に挟み、ズボンのベルトに手を掛けながら、「スタイルヒート EXTRA」に片腕を通さんとする”のは、男性あるある??

……。
……。
……。

いや、現代人あるあるか!?
いや、そもそもあるあるじゃないのか?!

……。
……。
……。
……う~ん、「イオナズン」も「かめはめ波」も「スーパーゴーストカミカゼアタック」も食らい放題な――隙。

だいたい腕が3本になっても通す袖が3口になれば変わんねーか、結局。

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