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2度目のキスから

先に言ってしまえば、タイトルと本文は無関係だ。

興味がない人は、小耳に挟んだことすらないだろうが、乃木坂46から派生したユニットが歌っていた曲のタイトルである。

歌詞の内容は、一度目のキスはとりあえず、する――すでに、している。けれど、二度目までの間に、誘惑に負けることなく、相手の本心を吟味しろという、イマイチよくわからないもの。
初心な女性が、キスくらいはノリでしますけどと、すでに一度目を済ませていることに、飲み込みにくいノッキングがあるのだが――子供のうたなのか、大人のうたなのか、わからない――、まあ、そういうこともあるのだろう。

個人的には、キスに限らず、一度目よりも、二度目の方が緊張する。

おそらく、この気持ちは人によって大きく分かれるはずで、先の歌詞世界の中で垣間見える男性のように、一度飛び越えてしまえば、二度目はお散歩感覚で楽勝の余裕という人もいるだろう。
むしろ、こちらの方が多いという気もするし、若い人にその傾向があると思う。“調子に乗れる”というのは、人生における特権である。

その中で、何故、またの機会が初対面を上回る緊張感に襲われるのかと言えば、そもそもシャイだからがオフィシャルな理由。
が、内実は、人間が好きではないというのが、ひそひそ話で語られる信憑性を秘めた理由。

初対面の相手は、準備や予測もなく、突然であることが最近の常なので、そもそも緊張もくそもないのだが、言い方を変えるのならば、所詮“風景に毛が生えたようなもの”。
平面的な風景から飛び出した3Dである。
だが、もう一度その3Dに会うとなると、その人型3Dは人型3Dではなく、「人なのだ」と否応なく認識させられるのだ。

だから、二度目は嫌だ。
「旅の恥は掻き捨て」とはよく言ったものだ。

とある会社のガレージで寝ていたら、社長に会った。
もう誰も従業員などいないだろうと思っていたから、虚を突かれた。
走って逃げたら怪しさが増すので、逃げるという発想はない。

堂々と。
もしくはヘラヘラと。
「愛想」というやつを振りまく。

コツは、そこが誰の敷地だろうと、困った時はお互い様だよな、ってなノリで、悪いことをしているという顔色を一片も漏らさないこと。

当然、怪訝な顔をする人もいる(最近されたなあ)。職務上、出て行ってくれないと困るという夜勤勤めの方も。逆ギレ気配を漂わせながら、「ケチケチすんなよ」という雰囲気で立ち去ったり(何かスイマセンね)。
だが、中には「ヤベっ。見つかった」から会話になる人もいる。
とある会社の社長とは「会話」になった。

端折る。
そして、どうもそこの会社で、下の方から働けることになりそうだ。
自分が、“二度目の緊張(緊張自体は一度目なのだが)”に打ち克てれば。

もちろん、一度目が縁だったのと同じように二度目も縁なので、雇用にはいたらない可能性もある。
自分が、一度目と二度目の間で緊張感が高まってしまうように、社長も冷静になることで、態度が変わってしまう可能性もあるわけで。

しかし、だとしても、二度目を迎えないわけにはいかない。
勝手にドキドキしているだけだとしても、一宿一飯の恩がある。
どうも調べてみると、思ったよりでかい会社の社長のようで、何かヤダな~感が増しているのだが、ここは踏ん張って、“旅の恥を上塗り”する覚悟で。
せめて“恩分”くらいは返さねばならん。

しかし、だが、まあ、一度キスしたら二度目はベッドインだろうという、リビドーまみれの勢いが羨ましい限り……な今日、今しがた。

ついでに。
社長さんの御厚意とは別に、“インベーダー”には囲まれました(若インベーダーの方が、「別に自分らも単なる公務員として来ているだけなので」とぶっちゃけてくれるので話はし易い。よっ!愛想あるね!!)。

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