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永遠の嘘

“ミイラ取りがミイラになる”という言葉があるが、KANさんの「永遠」をブログに用い出して以降、半ば狂ったように聴いている。

今も、いい歌だ。
ただ、違和感がある所もある。

取りも直さず、これもブログで引用した「僕の存在が君の重荷になるならその荷物も僕が持ちます」という部分。
初めて聴いた時から、“具体的にどう持つの?”という疑問が離れない。

「自分の存在」が重荷なのに、その重荷を「自分が持つ」というのはパラドックス以外のなにものでもない。
謂わばこれは、“この世の中であなたのことが一番好きなのは僕なので、ずっとあなたのそばにいます”というストーカー理論だ。

「永遠」の場合は、前提として“相思相愛”であることが窺えるので、ファンがこれを聞いたら怒りそうではあるが。
しかし、切り取りで語るなら、理論上はそうなる。

一方、KANさんのファンらしいMr.Childrenの桜井さんは、自身も「永遠」というタイトルの曲を発表(この歌は、KANさんの「永遠」とは違うアプローチで、逆説から為る「永遠」)し、また「Everything (It's You)」の中では「僕が落ちぶれたら迷わず古い荷物を捨て君は新しいドアを開けて進めばいいんだよ」と謳っている。
これは、KANさんが謳う「自分の存在」論を現代的に進めたものであり、ようは“重荷に感じるのなら、自分のことを捨ててくれ”というもの。
理論上の破綻はないし、ガキが聞いても納得できる。

つまり、KANさんの「永遠」は独善的。
しかし、“それが人を好きになるということなんだよ”という答えを示している。
「理論」ではなく「感情」が、鼻先程度には、少なくとも飛び出ちゃっている歌。

冒頭では、自身のことを、「君と出会わなかったら、不安げな理論家」であったと謳っているくせに。逆。
君と出会ったせいで理論が破綻している。
そして、辻褄が合っている。

翻ってYOASOBIの「アイドル」では、“人を好きになったことがない”というニュアンスのことが謳われているが、やはり刺さらない。
これを正面から受け取るのは難しい。

作詞・作曲をしているAyaseさんは、小説等を引用、孫引きして制作しているだけだから、そもそもそういう世界観で物語っている漫画の方が「なに言ってんだよ(笑)」という作品なのだろうけど。

誰も好きになったことがない人などいない。
そんな人間、存在しない。嘘。

ただ、例外はある。
0.1mlも性欲が無い人間。
生まれてから、その瞬間まで一度もSEXはおろか、自慰行為もしたことがない人間。
その限りにおいては、この例外が当てはまる可能性がある。

情状酌量の余地を与えるなら、作品の中の「AI(アイ?)」という登場人物が女性であるということで、女性ならではの感覚があるのかもしれないということになる(自慰行為における“抑圧と解放”も大きく違うのかもしれないし)が、おそらく男性が原作者なのだろうし。
改めて言うが「アイドル」で謳われていることは、嘘。
「漫画にマジになってどうすんねん」って、ツッコんでくれてもいいんだけど。

余談。
今年のレコ大の特別賞は、KANさんの「永遠」に上げてもらいたい(もしくは、上げてもらいたかった?)。
YOASOBIの「アイドル」は、現実に一番売れていたわけだから、シンプルに大賞で良かったのでは?
本音を言うのなら、YOASOBIの処遇はどうでもよくて、KANさんの席を空けて欲しいだけなのだけど。

とわであれ。

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