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維新と立憲の国会内共闘の意義

こんにちは、海原雄山です。

今回は、先月発表され物議を醸した維新と立憲の国会内共闘の意義について、今までツイキャス等で話をしていたことについて、整理しておこうと思います。


事実の確認

合意内容

まず、事実を整理しましょう。

臨時国会を前に、9月21日に維新の遠藤国対委員長と立憲の安住国対委員長が、6項目の事項について国会内で「共闘」することとなりました。

6項目の事項は以下のとおりです。

1. 臨時国会の20日以内召集法案の提出
2. 一票の格差を是正する公職選挙改正案の今国会中の処理
3. 通園バス置き去り事故(子どもの事故)防止のための法案提出
4. いわゆる「文書通信交通滞在費(文通費)」改革、使途公表の法案成立
5.旧統一教会問題等に関する被害者救済と被害防止に向けた措置への協議
6.若者・子育て世代に対する支援策の提案

いずれも今までの維新の主張や政策からそれるわけではないと考えられます。

なお、この合意については、国対マターで行っていたことですが、立憲側の安住国対委員長の方から合意の当日に文言が盛り込んできたと言われています。


党内の受け止め

党内の受け止めはどうでしょうか。

先ほどの毎日新聞の記事の中では、合意に対して維新と激しく議席争いをしていた立憲の国会議員のネガティブな反応であることを伝えています。

それは、維新側も同様で、先月末には大阪府議団からも両党の国会内共闘について抗議の声が寄せられており、合意に至るまでの経緯の説明を求める文書をまとめるまでに至っています。

松井前代表がぶら下がりの中で、府議団に自制を求めること、そしてあくまで国会内における一部政策の共闘にとどまるもので、選挙協力等はないことを強調してます。

後日執行部からも改めて合意に至る経緯が説明され、大阪府議団をはじめとした地方議員にも納得してもらえ、各所属議会でも説明することに協力を得られたとのことです。

有権者(支持者)の受け止め

一般有権者、とりわけ支持者の受け止めはどうかと言うと、正直ネガティブな声が多いようです。

その多くが、「共闘」という言葉に拒否反応を示している方が多く、「なぜ、あそこまで激しく批判し合った立憲と共闘なのか?」という声をよく聞きます。

特に、ただの政策的協調なら今までもやってきたことで、今回だけなぜ合意内容を文書に残したのかについて疑問の声も多くあります。

また、ふんわりと維新に好意を抱いていた一般有権者が離れるのではないかという選挙面での影響について、懸念の声も聞かれます。

一方、国会内での政策実現のための合意なので問題ないとする声も少なからずあり、受け止めは様々なようです。

この合意をどう解釈するか

立憲のねらい

なぜ今回立憲はこの合意を持ち出したのでしょうか。

あくまで私見ですが、以下が考えられます。

一つは与党への攻め手に欠ける野党第一党の立憲が、勢いに乗る維新との協力で活路を見出したのではないかとの見方があります。

立憲は、昨年の衆院選、今年の参院選と連続で議席を減らしており、明らかに民意が離れており、いくら国会内で政府批判しようと、そこに民意があるのかというのは疑問であり、いまいち説得力に欠けるとみられます。

しかし、ここで、衆院選以来躍進が続く野党第二党の維新と協力することで、政府に強く出ることもできると考えられます。

もう一つは、維新から票をはがすという意図もあると考えられます。

今まで維新は共産党との選挙協力を進める立憲を、「立憲共産党」と揶揄し、立憲から無党派や保守よりの有権者を引きはがし自分たちの票につなげてきたことに成功してきたと言えます。

国会内で一部の事項のみとは言え、その立憲と組むことで、維新の一部の支持者やふわっとした民意を維新から離れることを企図した、いわば「抱き着き戦法」と言えるかもしれません。

立憲サイドが「共闘」という文言を合意に盛り込んだり、維新との共闘を強調するコメントを連発するのもその意図が透けて見えます。

ただ、これによってそういう層が立憲に投票するかと言うとそういうわけではないので(おそらくその層が維新以外に入れるとすれば、その投票先は自民か無投票・・・)、政権奪取のためというより、維新の票を削って野党第一党を死守する以上の意味はないでしょう。

維新のねらい

では、カウンターパートである維新がその政策合意に乗った意図は何でしょう。

これもあくまで私見ですが、以下が考えられます。

一つは、岸田政権との対決姿勢を鮮明にすることです。

安倍・菅内閣とは、政策的にもトップ同士の距離感も近いことがあり、割と協調的であった経緯はありますが、昨今支持率が大きく低下している岸田政権に対して議会で協力する義理もメリットも少ないため、あえて対決姿勢を示すことが政権批判票を多く集めることにつながると考えられます。

そのために野党同士でまとまって対決姿勢を示すために、立憲との一部政策合意に踏み切った可能性はあります。

しかし、対決姿勢を示すなら維新単独でもできるわけですし、立ち位置的には国民民主との協調でもよかったわけですから、果たして立憲との合意の理由になるか疑問です。

二つ目は、単純に政策実現のため。
躍進したとはいえ、まだ議席数は41議席と少数であるため、よほどのことでなければ、与党の合意を取り付けない限り、維新提出の法案は通りません。

そこで数を揃えることで少しでも実現可能性を高めるという意図があるのではないかと考えられます。

しかし、当たり前ですが立憲を引き込んだところで、数の上で過半数には遠く及びませんので、やはり自民、公明から協力を取り付けないことには難しい話です。

三つ目、むしろ立憲を攻撃するための材料づくりではないかと考えられます。

合意内容はいずれも維新の政策や考えに沿うものでした。

基本的な政策の考えが大きく異なる立憲がその文言のとおり協調するとは限りません。

特に文通費の使途公開については立憲サイドでも消極的で、使途を自主公開する党独自のルール制定の見送るくらいには、「やりたくないこと」のようです。

そんな中、旧文通費使途公開の法案成立にまで本気で尽力するとは考えられず、途中で降りることはある意味想定済みで維新も今回の合意に乗ったと考えられます。

では、なぜ破られることが目に見える合意をわざわざしたのかですが、この合意をもって、「立憲民主党は改革に後ろ向きである」「与野党なれ合いの結局55年体制を延命させているのは立憲」という批判を行うための布石としたのではないかと考えられます。

だからこそ、今回わざわざその合意内容を文書の形に残したと考えれば、一連の動きも整合性があると考えられます。

私はこの説が最も濃厚だと考えますが、果たしてみなさんはどのようにお考えでしょうか。

選挙協力はあり得るのか

さてもっとも皆さんが懸念されている維新と立憲の選挙協力ですが、私はこれはあり得ないと考えております。

3月に発表された中期経営計画では、明確に次期衆院選での目標を「野党第一党」と謳っています。

なのに、立憲と選挙協力をしてしまえば、その目標は達成できません。

なぜなら、選挙協力とは大きく「票の融通」と「選挙区の棲み分け」が考えられますが、前者は一方的に立憲サイドが票を分ける与えるだけなので、立憲に全くメリットがないためあり得ませんし、そもそも維新が労組票、とりわけ自治労や日教組の票を受け入れるわけがありません。その手のしがらみを持たないために一線を引いて来たわけですから、わざわざそんな票を引き込むことを望まないでしょう。

では、「選挙区の棲み分け」はどうでしょうか。現職が多いのが立憲サイドですので、維新は現職の多い立憲に譲歩を迫られて、そもそも目標である野党第一党を目指すための候補者を立てられない事態に陥ります。

比例の票で伸ばせる議席にも限界がありますので、やはり、「選挙区の棲み分け」では野党第一党は難しいでしょう。

なので、「野党第一党」を衆院選の目標に据えているため、選挙協力はあり得ないと考えられます。

これが、仮に中期経営計画で「自公過半数割れ」を目指すなら、「選挙区の棲み分け」を行う意義はあります。野党候補を一本化することで、小選挙区で自公を負けさせる可能性が高まるわけですから。

しかし、実際には、維新が野党第一党を目指すという目標を立てているわけですから、「選挙協力=選挙区の棲み分け」はあり得ないと考えられます。

まとめ

では、この国会内共闘の意義についてまとめです。

・合意内容は維新のこれまでの政策や考えに沿うもの
・当初党内でも驚きをもって受け止められたものの鎮静化
・有権者(支持者)は賛否両論
・立憲は維新の票はがしを企図?
・維新は実は立憲に結果にコミットさせようとして、次の展開への布石としてわざわざ文書を作って合意した可能性も
・選挙協力は、中期経営計画の次期衆議院議員選挙野党第一党という目標から考えてあり得ない


さて、維新・立憲の国会内共闘は、早速効果を表しているようで、与党を動かして、維新ペースで国会論戦をリードしているようです。

今後もこの共闘の行く末については、しっかり見届けていきたいです。

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