中国語だと、パクチーって意味だよ!

入社してすぐ現場に配属されて6日目。
今日一緒にフロントに立ったのは中国の女性だった。
彼女は母国語の中国語と、日本語に加えて英語も話せた。
トリリンガルってやつだ。
正直、うらやましい。
あとで知った話だけど、中国語と英語の発音は似ていて日本語を覚えるよりは簡単らしい。

入ってまもない俺はまだそんなに会話をしたことがなくて、無言状態が続く。
旅行会社から予約が入り、コピー機から予約者の情報が載った用紙が送られてくる。
送られてきた用紙を持って、彼女は笑いながら話しかけてきた。

「この人の名前、中国だとパクチーって意味ですよ!知ってますか?」

と少しカタコトの日本語で言ってきた。
急に話しかけられて言われた内容が頭の中にうまく伝わらなかったけど、そのコピー用紙を見て理解した。

あぁ、そういうことか笑

飲食店で数年働いていたから何度も見たことがあるその二文字。
発注をかけるときに漢字表記されることが多くて、最初はその文字を見るたびにニヤニヤしていたけど、あるときから苦笑いに変わった。
それは長く付き合っていた人の名前だったからだ。

そんな自分の過去を当然、全く知らない中国の彼女は何が面白かったのかずっと笑っていた。
そんな彼女を見て、昔のあの子にパクチーってあだ名付けたら怒ったかな?笑ったかな?なんてふと思った。


これは、ここで働き始めて最初の洗礼。
それから今までの2年間、毎日のようにたくさんの名前を見ることになる。
俺が今まで出会った、たくさんの人たちを思い出すトリガーを引く仕事。
それはまるで今までの人生を振り返るような、過去と向き合う2年間。
来年の春にはこの仕事をやめて、新しい世界に飛び込んでいく。
きっとまだ知らない名前に出会えることだろう。

どんな人たちが待っているかな?



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