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サブカル大蔵経298金森修『病魔という悪の物語 チフスのメアリー』(ちくまプリマーブックス)

動物の生命論、ゴーレム論や人形論など、独特の視点と語り口で、学者というより貴重な哲人の趣きだった故金森修先生の新書がコロナ禍の今、まさかの復刊!

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ドクロとフライパンという呪われた刻印を持つ家政婦がコロナの時代によみがえる。

それは明日のあなたかもしれない。

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カーヴィング・フォークという大きなフォークを振り上げてソーパーの方に向かっていった。/この最初の邂逅の場面は、その後何度も取り上げられ、イラストとなって社会に流布さえすることになる。p.28

 サブカル的キャラ付け。しかし…

アメリカに移住してきたアイルランド系移民家族の一つだった。/身長165センチ、体重90キロ、客観的とはとてもいいがたい。p.19.36

 誇張した噂が広がる伝言ゲーム。

歩く腸チフス工場。/体内に細菌を生かしたまま動き回るキャリアp.45.106

 報ずる側も、憎悪なのか、娯楽なのか。阿部定事件の時の新聞に似ています。

メアリーは、今後は料理をしないという誓約書を書かされた。p.89

 ネタのような誓約書。しかし…

公衆の衛生のためには、公衆衛生局は、個人の権利や所有権にまで踏み込むことができる。/一般社会の健康にとっての危険因子が、汚れた環境から、病原菌をもった個人へと収斂を遂げp.34.62

 その個人がリスト化される。

メアリー再逮捕/一生無期限に隔離され続けた。p.94.98

 科学なのか、魔女狩りなのか。

電車で隣に座る人が、恐ろしい感染の源泉に見えてこないとも限らない。p.137

 金森先生の予言書、胸に秘めて。メディアの問題、人権の問題、わたしの問題。

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