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サブカル大蔵経944ジョージ秋山/大島剛『漫画家本15ジョージ秋山本』(小学館)

私は、ジョージ秋山の丸みのある絵柄が怖かった。ギャグとホラーが簡単に転移する雰囲気があったからかもしれません。

私にとってのジョージ秋山初体験は『ほらふきドンビンジャン』でした。

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連載『ほらふきドンビンジャン』小学3年生4月号〜79年3月号/未収録。口の達者な小3の息子・ドンビンジャンのほら話コメディ。ヒロイン役としていとこのプリンちゃんが華を添えている。p.141-142

忘れかけていた「ドンビンジャン」を本書の大西祥平さんの詳細なリストのおかげで思い出すことができました!

プリンちゃんか、「ロボッ子ビートン」のネンネンが、私が初めて性を感じた対象だったと思います。

あとは、学生時代、毎週メシ食ってた近所の喫茶店にアクションが置いてあり、そこで毒薬仁と出会いました。

近年ジョージ秋山をきちんと批評してくれたのは「映画秘宝」での大西さんだったと思います。小池一夫や早見純も含めた大西さんの漫画批評本が早く読みたいです。

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本書を店頭で見た時、右下の「柳沢きみお」に衝撃を受け購入を決意しました。昨年は夏から秋にかけてずっときみお作品をKindle Unlimitedで読み続けていたので。

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柳沢きみおが取材に応えるのは珍しいのでは?本書ではジョージ秋山を五歳年上の兄のような存在として、こう話されます。

「でも、どこか漫画界で唯一、親近感のある大作家でした」p.54

ギャグからシリアスまで。出版社の垣根を越えた同時連載、多作。哲学、自分語り。たしかに漫画史においても唯一無二かも。

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柳沢きみおの完璧なデロリンマンに感動!

他にもそうそうたるメンバーが、パットマンX、デロリンマン、銭ゲバ、アシュラ、ザ・ムーン、ゴンズイ、恋子の毎日、くどき屋ジョー、ラブリン・モンロー、浮浪雲などを語りまくり、充実の一冊。

作品もすごいけど、一番すごいのは、ジョージ秋山先生ご本人なのかもしれません。

「ともかく君たちはテーマでも何でもいいから掘って掘り返さなくちゃダメだぞ。ちょっと掘って天然ガスか何かが出てきて、それが金になるからと甘いことをしてたら三流で終わるぞ。己を傷つけて掘り切らなきゃな」p.14

伊集院静とジョージ先生。すごい星座。

「1箱じゃなくて1箱半だよ。なんで1箱半だったかわかんないけど(笑)」p.21

師・森田拳次のアシスタントを離れた時、餞別に頂いたインスタントラーメン。「半」にこだわるのがジョージ秋山の描くリアルなのかなと。

「やっぱりトキワ荘の人たちに対しては、対抗心みたいなものはあっただろうね。赤塚(不二夫)さんにケンカふっかけるようなこともあったから(笑)」p.23

ちばてつや「トモガキ」でも描かれたトキワ荘の周縁にいた作家たちの存在。

最後は秋山命さんの文書で締められます。田中圭一『ペンと箸』で最も印象的だった御子息のお話を再び伺えて良かった。

これから本書のリストを基にジョージ秋山の作品を読んでいきたいです。特に氏が描く宗教観を読んでみたい。私が初めて漫画で出会った念仏は『アシュラ』の和尚さんが称える「南無阿弥陀仏」でした。

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