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サブカル大蔵経674ホフマン/上田真而子訳『くるみわりとネズミの王さま』(岩波少年文庫)

村田沙耶香『マウス』に出てきた本書。市内の書店の岩波少年文庫の棚の前で探しましたが、本書の在庫なく取り寄せました。

作者のホフマンって、E.T.Aホフマンのことなんですか!

種村季弘の本で名前だけは良く見ていましたが、とにかく不気味なイメージ。

少年文庫なんだからそんなことないと思ってたら、かなり不気味でした。暴力的に。

『不思議の国のアリス』のドイツ版なの?本作はさらに境目がぼけていて、割り切れない。でも『マウス』のあの子はこの作品で生き返った。わからないパワーを持つ。

ドイツでの経典になるのか、本国を離れたところで照らす経典になるのか。

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おぞましい声でシューシュー、チューチュー鳴きながら、床下からぐいとせり上がってきているのです。つづいて、ネズミのからだも出てきました。その首から七つの頭がニョキニョキと生えているからだが。p.44

 この描写、子供相手だからと手を抜かない、いや、逆に気合が入ってる描写。読んでる子供、卒倒しないのかな?

そういうなり、マリーのベッドのすぐそばにきて腰をおろし、はなしはじめました。「いいかい、マリーちゃん、おじさんがすぐに駆けつけて、ネズミの王さまの十四の目をえぐりだしてやらなかったからって、おこっちゃだめだ。」p.69

 子供のすぐそばに座るドロッセルマイヤーおじさま。この距離感に、ヨーロッパの本質を感じる。

かわいそうに、こうしてマリーは、もうなにもはなせなくなってしまいました。/ですから、マリーは、これまでのようにあそびまわるのではなくて、しずかにじっと座って、思いにふけりがちになりました。p.165.167

 話すこと、放つこと、蓋を破る物語。

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