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サブカル大蔵経180『文藝別冊総特集橋本治』(河出書房新社)

 橋本治は菩薩だったのか?

 半ズボン、反乱、翻訳、橋本治というジャンル。全身啓蒙家の慈悲の姿。

 私は橋本治の著作はできるだけ買って読んでいたつもりだったけど、小説もひらがな美術史も窯変源氏も未読なので、橋本治の創作と橋本治の翻訳する古典という存在をこれから読んでいきたい。

 私が好きな本は、①花咲く乙女たちのキンピラゴボウ②青空人生相談所③夜中の学校橋本治の思考論理学、です。

 少女マンガを評論した『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』という本に出会った衝撃は未だに冷めていません。大島弓子、大矢ちき、樹村みのり、萩尾望都、倉多江美。登場人物のセリフ、線、行動、思想。評論された対象が輝く。これが評論なんだと思いました。

 倉多江美がフランス革命前後の政治家・コティを描いた『静粛に、天才只今勉強中!』。学生時代行ってた喫茶店に置いてあったので読みましたが、その題名は橋本治に捧げられたのかと思っていました。

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だから俺さぁ大学3年の頃から家にお金入れてたよ。授業料も自分で払ったし。それもみんな、食えてるから文句言わないでよーって言う父親に対する意思表示だったんだよね。夜中に牛乳配達の準備している父親に向かって言ったんだよね。大学院に行っていいかなって。ツライよオ!母親は働きすぎたんだろうね、喫茶店1人でやってて顔面神経性の病気にかかった。p.34

 本書で橋本治が常にお金に苦労させられていたことを知りました。新書が濫発された理由のひとつのようです。

アホにも礼儀正しかった。(姫野カオルコ)p.86

 ヤンサンでの連載を思い出します。あとは、『青空人生相談所』。あれは、根室に行く時の夜行列車内で読んだような気がします。

橋本さんは天才だなぁと何度も村上さんがおっしゃっておられたことが耳に残っている。(嶋中行雄)p.148

 発表した小説が業界から無視されていたことが触れられていました。橋本治の天才は、他の人があらわせないものを「あらわす」顕す・表す・現す・著すことだと思います。創作という形でしかあらわせないものがあったのでしょうか。

実は私、まだ学生だった20代の前半から、まっさらな原稿用紙を500枚買うと幸福になる人間でした。p.191

 何かこの「note」に捧げた言葉のよう。言葉の力を信じた人だったからこそ、職人としてマスを埋めた。

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