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サブカル大蔵経177渡邉直樹編『宗教と現代がわかる本(2015)マンガと宗教』(平凡社)

 〈マンガと宗教〉なんて一番嬉しいテーマなんですが、五年前の本なのに、内容がだいぶ昔のように感じられました。現代を作品で語るからだろうか。現代を説明するために作品を使用しようとすると、作品自身が矮小化されることを避けてすり抜けていってしまうような感じがしました。

 宗教的漫画作品…、本書では、手塚ブッダ、ナウシカ、エヴァ、20世紀少年…。

 今なら、鬼滅、進撃、聖⭐︎お兄さん、阿吽、レベレーションなどでしょうか。

 〈マンガと宗教〉を自分が編集するとしたら、どういうアプローチがあるだろうか?宗教をテーマにした作品や、作品の中で宗教が取り上げられている場面のコマを集める?…いや、そもそも〈宗教〉とは何だろうか。宗教そのものを扱う作品ではなく、作品が宗教的なもの…?

 たとえば『アストロ球団』が浮かびます。〈一試合完全燃焼主義〉の名の下に次々と人が倒れていき、退場、いや、往生していく作品。野球漫画の嚆矢ですが、あれこそ宗教的漫画作品の金字塔と言えるような気がします。

 あとは、小田扉『団地ともお』の背景にある哲学や、清野とおる『赤羽シリーズ』での慈悲性に宗教的な感じを受けます。

 漫画で、現代の宗教を解体・再構築できたらいいなと思います。テキストは漫画ですね。

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釈 農業へと向かう武蔵。親鸞も新潟に流されて大地性を得る。
井上 武蔵から何物でもない人間になるひとつの段階 p.22

 2015年、「マンガと宗教」というテーマで選ばれた漫画家は、井上雄彦だった。『バカボンド』や『リアル』などの作品の内容もさることながら、そのたたずまいや言説はどんな僧侶よりも求道的で、真宗大谷派に依頼されて襖絵を描いたりもされていました。求道の行き着くところは何なのか。肩書きを放つ「捨」の精神か。人間になる成長譚か。

教行信証とはその冒頭から最後まで繰り返し阿闍世王の救済は果たして可能なのかという問題のために捧げられた書物である。(四方田犬彦)p.67

 四方田犬彦さんは『親鸞への接近』という著作を後に出します。

美智子様とのご成婚に保守は大反対した。粉屋の娘ごとき民間人から入ってきていいと思ってるのかと。その急先鋒だったのがNHKの朝ドラ柳原白蓮。華族の籍も抜かれているのに、右翼の集団の中に入り込んでいって、美智子様は民間人だから全然ふさわしくないと右翼を煽り立てていたわけです。民間からお妃を入れたら伝統が崩壊すると。(小林よしのり)p.132

 北海道を訪れた白蓮さんの歌碑が近隣の上川町にあります。

2014年12月JTBがグループ二社に公明党支援要請。p.204

 さらっとこんな記述が。

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