サブカル大蔵経456竹宮惠子『少年の名はジルベール』(小学館文庫)
あけましておめでとうございます。
目に留めていただき有難うございます。
学生時代に読んだ角川の竹宮惠子全集。風と木の詩は青い表紙。本書も青で嬉しい。
女性版トキワ荘といえる伝説の大泉サロンで同居していた萩尾望都への嫉妬と、己の古くささの自覚などが、率直に吐露されていました。解説のサンキュータツオさんも述べられているように、驚きました。
萩尾望都でも大島弓子でも山岸凉子でもない、竹宮惠子にしかできなかったこと。
それを追体験しながら、日本のマンガ文化の特異性と、竹宮惠子の敢闘に、感謝したくなりました。
まだ少女マンガ雑誌を立ち上げたばかりの小学館なら、私でも活躍できるんじゃないか。p.13
出版社と少女マンガ。戦略と粘りの姿勢がすごい。
大泉は男子禁制ではない。桜田吾作氏、大和田夏希さんなど。夏希というペンネームは私が考えたものだ。p.79
私は初めて読んだ漫画が桜田さんのグレンダイザーでした。大和田さんの『虹色town』は今のエロ漫画界にも多大な影響与えていると思います。どちらも男臭い画風なのに描線がエロいところが共通点か。
それにしても、トキワ荘の紅一点の水野英子の立場が、大泉サロンでは、桜田吾作と大和田夏希だったとは…!
男性作家より、原稿料単価が安い。単行本の印税も低い。p.80
こういうこともあったんですね…。少女マンガも男性が描いていた時代。竹宮さんは常に戦っています。外に開かれているというか。それが大学の学長になられた縁のような気がします。
山岸さんは「自分もずっと同性愛的なものをやりたいと思い続けていたんだけど、一番は竹宮さんね。」山岸さんに認められたのはことのほか嬉しかった。p.108
同性愛マンガはなぜこの時代に花ひらいたのか?という永遠のテーマ。そしてそれは今に続く。和山やま『カラオケ行こ!』を読みながら思いました。
萩尾さんは、映画のように描く。やがて大島弓子さんの作品の中にも。p.144
映画のように…か…。漫画は映画の絵コンテになってしまわないのだろうか。
見送りはYさんひとり。「おまえらもう帰ってくんなーっ、バカーっ!」p.159
作家と編集者の関係すごい。この四人での欧州旅行は岩倉使節団に匹敵。山岸凉子のアラベスク、萩尾望都のトーマの心臓、竹宮惠子の風と木の詩が、欧州を舞台に描かれた作品が生まれた。空前絶後。