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サブカル大蔵経802大塚公平『漫曲グラフィティ』(彩流社)

「少年チャンピオン」は、なぜ語られるのか?壁村さんと茜で飲みたくなりました。「週刊ファイト」のI編集長の「喫茶店トーク」のように。

私にとって「チャンピオン」は、中学から唯一立ち読みを続けていた漫画雑誌です。『大甲子園』や『魔界ハンター』を読んでいました。

本書の編集者と作家のやりとりを読んで、懐かしさと、黄金期をリアルで知らないもどかしさが交差しました。

石ノ森章太郎と赤塚不二夫と小池一夫をdisっていたのが印象的です。それくらい雑誌には「色」があるんだなぁと。

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「ようし、わかった、ご苦労だった。カベちゃんによろしくな」p.35

 真樹日佐夫先生登場。

水島先生はその都度「もう少し」「あとちょっと」とノラリクラリ。p.63

「ドカベン」が野球に移行しない理由が推理されていました。

編集部内では「マカロニ派」と「がきデカ派」に別れていた。p.81

 団体内軍団対抗。これは強い。ただ私には山上たつひこはホラーだし、鴨川つばめはシュールで、「笑う」対象ではありませんでした。どちらも漫画のもつ〈不気味〉を代表していました。

チャンピオンの色って〈不気味〉なんだと思います。『ブラックジャック』も第一巻は「恐怖コミックス」のレーベルでしたし、『エコエコアザラク』も高橋葉介も。不気味なんだけど、惹きつける魅力。本書でも、編集者によるその方向性が示唆されています。

それをメタ的に表現したのが、根本尚『恐怖博士の研究室』かなと思います。大好きでした。

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『月とスッポン』の柳沢きみおも「ジャンプ」育ちだが(専属からフリーになった)、この人には不思議と"ジャンプ臭'がない。後年も各雑誌のカラーにキャラやストーリーを巧みに合わせているしなやかさは特筆に値しよう。p.89

 ジャンプ、チャンピオン、マガジン、スピリッツ、アクション、アッパーズ、日刊ゲンダイ…。七色の柳沢きみお。

翌年まで続いたのは『べにまろ』(木村和昭)『すくらっぷ・ブック』(小山田いく)『るんるんカンパニー』(とり・みき=すべて新人まんが賞出身)だけ。p.117

 いつもドカベン単行本の巻末広告で名前だけ出会えていました。

「お〜い、トルちゃん!」と呼びかけた。p.137

 梶原一騎の部屋で水割りを作るユセフ・トルコ。

福岡ダイエーホークス(当時)と広島(東洋)カープは「水島先生には球団の宣伝面でお世話になっているから」と辞退したことを追記しておく。p.192

「ドカベンプロ野球編」と「あぶさん」に対する野球機構からの出版社への肖像権許諾料問題。秋田書店と小学館のタッグ。水島新司の男気!

『チャンピオンズ』と併せて読みたいです。


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