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サブカル大蔵経706中川右介『萩尾望都と竹宮惠子』(幻冬舎新書)

衝撃の『一度きりの大泉の話』発刊以来、私は活字プロレス世代なので、〈活字少女マンガ〉をしていました。作品よりもその周縁の資料を読み、人間関係を想像していく。純粋な作品や作家ファンからは嫌がられ、プロレスなら長州が激怒する行為。

一九四九年、昭和二十四年前後生まれ、ベビーブーム世代の女性マンガ家は多い。47〜池田理代子、山岸凉子、大島弓子、48〜里中満智子、青池保子、木原敏江、大和和紀、49〜萩尾望都、樹村みのり、山田ミネコ、岸裕子、一条ゆかり、50〜竹宮惠子、ささやななえこ、庄司陽子、いがらしゆみこ、51〜美内すずえーp.19

24年組の登場が革命なら、プロレスで言えばUWF。理想と現実。誕生と崩壊。

萩尾望都は佐山で、竹宮惠子が前田か?大島弓子は藤原で、山岸凉子は山ちゃんか?

それか、萩尾望都が猪木、竹宮惠子が馬場で、増山法恵が馬場元子か?

宝島社から『証言 24年組 大泉サロンの虚実』というインタビュー集が出てもおかしくない。

その妄想を刺激してくれる資料が本書であり、描かれていないところも含めて、さらに背景や人間関係を想像して、逆に24年組たちの作品そのもののすごさが現代の人にもより伝わることを願いたいです。

中川右介さんの本は、『手塚治虫とトキワ荘』と、『読解!ドラえもん講座』を読んでいました。

本書でも、その方法論を生かして、1970年代、少女マンガという舞台で日本の文化を変えた二十歳前後の女性たちの姿を、書名の二人以外もすべて登場させる群像劇を編年体的に著してくれました。

そして、どういうタイミングなのか、本書発行の翌年出版された『一度きりの大泉の話』についても文書を寄せられています。

『大泉』が発刊されても本書の価値は落ちないという宣言でもあるかと思います。

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椎名町に始まる、手塚治虫とトキワ荘グループが作り上げた日本マンガのメインストリームは、西武池袋線を西へ流れ、桜台、富士見台を経て、大泉学園がひとつの終点となる。p.15

 角川の雑誌「武蔵野樹林」で池袋線サブカルチャーが特集されていました。

なかでも横山光輝の『おてんば天使』をよく真似して描いた。p.51

 萩尾望都と横山光輝!なるほど、鼻の描き方、似てる。固く崩れない線。

「わたしは七〇年安保の熱しぶきを浴びている人間で」p.181

「スペクテイター」COM特集号での増山法恵インタビュー。大泉サロンでの少女漫画の革命運動は安保闘争の影響もあった!東京山の手の増山と地方の漫画家たち。理論が先走る増山とノンポリの萩尾竹宮か。

竹宮は椅子とデスク、萩尾は座卓。竹宮は南向きで、萩尾は西向きと、九〇度になる形で並んだ。p.188

 ふたりでいた時間を思う。

坂田靖子の命名で「大泉サロン」と呼ばれるようになる。p.189

 坂田靖子の存在。

1971年の萩尾望都と竹宮惠子、p.202

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中川さんの十八番、連載雑誌年表。作品を単行本でしか読んでいない人には当時の雰囲気がわからないので、貴重な資料だと毎回思います。週刊・連載の竹宮惠子、別冊・読切の萩尾望都。

萩尾は一週間ほど、ささやの家に泊まった。p.239

 『大泉』では10日間、別インタビューでは1ヶ月、ここでは1週間。芦別市の大事件だと思います。

1972年には、ベルサイユのばら、ポーの一族以外にも、歴史に残る少女マンガが連載されていた年だ。p.251

今から50年前。「りぼん」にて山岸凉子『アラベスク』連載、「少女フレンド」にて里中満智子『あした輝く』連載開始。

竹宮さんから、「大泉サロンを解体したのは、あなたを萩尾さんに取られたくなかったから」と打ち明けられた、と。p.272

 著者の増山法恵氏への取材。

この時点で萩尾望都にとって敬愛すべきライバルは大島弓子だった。p.288

 私も最近、萩尾望都と竹宮惠子を並立して論じることの無理筋を感じていました。たしかに、萩尾望都のライバルは大島弓子だと思います。またプロレスで例えると、竹宮惠子は藤波、萩尾望都は長州、大島弓子が鶴田、山岸凉子が天龍でしょうか?

竹宮惠子が唯一、萩尾望都に対して優位にあったのが、「週刊誌の連載を持っている」ことだったが、その領域にまで、萩尾は進出してきた。p.292

 しかもその連載がトーマの心臓。

佐藤史生は、1973年には竹宮のアシスタントとなり、74年は木原敏江や萩尾望都を手伝い、p.320

 『大泉』でも鍵を握る佐藤史生。復刊された『死せる王女のための孔雀舞』の解説が増山法恵でした。

1973年に竹宮惠子が「距離を置きたい」と萩尾望都に言ってから、二人の距離は、はてしなく遠くなっていった。p.336

 今読めば…だけど、『大泉』発刊前のこの言葉は攻めていたと思いました。

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