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読書する人、しない人

こんにちは、今日は少し暖かくて雪が溶けてありがたい気候です。

ここではゆるゆる読んだ本を紹介する記事を書いていこうかなと、とりあえず決めたのですが、
そもそも本を全然読まない人のことを知らずして書いてしまっていいのか?
なんとなく読まない人を置き去りにはしたくないな……と思い、

会社のだいぶ年上の男性で、これまでほとんど本を読んでこなかったと公言された方にいろいろ聞いてみることにしました。

ここでいう「本」とは一般的な小説などのフィクションを指しています。
以下、実際のやりとりを適当に要約してみました。



――たとえば、こういうジャンルだったら読めそう、というのはありますか?

(男性)ロボコップってドラマがあったじゃない。あれのノベライズは唯一読めたんだよね。シーンが頭に入ってて、読むとそれが再生されるから。

――内容を知ってるもの、たとえばマルチコンテンツ化した作品なら読めるんですかね?

(男性)そうだね。あとは何となく、小説の最後に設問が設けられていたらモチベーションになるかもしれない。小学校の国語のテストみたいな、「作者の気持ちを述べよ」みたいな。

――登場人物よりも、それを生み出す作者の方に興味があるって事ですか?

(男性)いや、そうじゃなくて、質問があればいいんだ。

――なにか答えが欲しいということですか?

(男性)そうそう、小説って答えがないじゃん。
そういえば、親族の1人がサッカーのファンで、テレビで見る時もすごく気合入れて見ててね。俺は全然好きでもないけど、テレビでやってたら何となく見る程度。
で、その人に、サッカーの何を見てるんですか?って聞いたの。
つまり俺は試合中ボールしか見てないわけ。一番動くから。
でもその人は、ボールも見るけど、それを扱う選手がどういう動きをしているかも見て、楽しんでる。
俺はボールしか見ないから楽しくない。

――なるほど、本も同じで、読書する人が何に注目して、何を楽しんでいるのかが分からないって事なんですね。
小説をこういうふうに読んで、こういう楽しみ方をすればいいんだよっていうのが欲しいということなんでしょうか。

(男性)そうそう。

このやりとり、なかなか興味深いと思いました。
普段から本を、特に文学やSFなどの小説を読む人が一番楽しんでいること、すなわち設定された舞台や世界観の奥行きを自由に空想したり、登場人物の言動から心情を想像したり、「if(あのときこうだったら)」を思ったり、作者の意図を勝手に解釈したり……といったことのやり方が分からない、ということなのかな。
活字を読み進めるコストを支払って、結果面白くないかもしれない、というリスクが許せないというのもあるかと思います。

これが「ダメだ」とか「知性に欠ける」とかジャッジしたいわけではなく、むしろ私の中にも多少なりともこういう側面があったことに気付かされました。

哲学や思想の本ばっかり読んでいた私が、初めてフィクションに触れた時もこんな感じでした。
他人の人生を、それも空想上の人生を垣間見て、一体何の価値があるの?何が楽しいの?と思っていた。
たとえば紛争地域の悲惨さを描いた小説を読んだとして、「戦争の悲惨さを知りたいならノンフィクションを読めばいい、いや読むべきだ」と思っていました。
あえてフィクションを読むのなら、教養として知っているべきだとされている作品に限るべきだ、とも。

今は、フィクションでしか表現できない重苦しい空気・息苦しさ・胸の内のわだかまりが確かにあると確信しています。
特に言語化しにくい、自分でも時々気付かないまま終わるような、分かりにくい微妙なモヤモヤなんてものは、フィクションが最も得意とする領域だと思っています。
だからこそフィクションを楽しめるようになったのかもしれません。

そういう気付きを得るきっかけになったポッドキャストを、最後に紹介しようと思います。

翻訳文学試食会
https://open.spotify.com/show/2HHp4JBHtqBf6ziqgKo6Rj?si=9d9ad551dbeb47d4


早稲田大学文学部出身で、いまも文学界隈でお仕事をされているお二人が、海外文学のうち、短編小説集の中の1編のみを読み合わせ、自由にざっくばらんに語らう……という読書会形式のゆるりとした番組です。
文学というものをどう楽しめばいいのか、どんなふうに解釈すれば面白いのか、どんな形で現実世界と接続されているのか、どうやって語り合えばいいのかということを理解するきっかけになりました。

もう少しで読み終わるアディーチェの作品も、この番組で見つけたんです。

本を紹介すると言いながら、一番最初にポッドキャストを紹介してしまいましたが、まあこれも一種の自己開示ということで。

次こそは本の紹介をしたいと思います!


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