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【書籍紹介/文化人類学】「ヒップホップの起源ってモンゴルなんだよ」ショートバージョン

最近本を読んでも記事を書く時間が無くてどんどんたまってきているので、思い切っていつもより文字数をガッツリ削って、ショートバージョンとして紹介していきたいと思います。

良く考えたら読む人も長すぎるとキツイですもんね。
今後ショートバージョンでは1500字は超えないように、気軽に書いていきたいと思います。

今回紹介するのはこれです。

『ヒップホップ・モンゴリア:韻がつむぐ人類学』 島村一平

文化人類学本です。新潟の本屋で偶然見つけました。
帯に「ヒップホップの起源ってモンゴルなんだよ」とデカデカ書かれていて、えっそうなの?!と思って手に取りました。
結構分厚い本なのですが、めちゃめちゃ面白かったので、内科で順番待ちしている間に読み終わっちゃいました(3時間以上待ちましたが……)。

まずヒップホップとは何か、なのですが、
ヒップホップはアメリカの黒人文化をルーツとするもので、DJ・ブレイクダンス・グラフィティ・MCの4大要素で構成されます。なので音楽ジャンルというよりは総合文化(スタイル)とも呼ぶべきものだそうです。
じゃあ音楽はどんな感じなのかというと、サンプリング・打ち込みのバスドラム4拍子のベースミュージックの上に、MCでラップを被せる……というもの。

つまり全然モンゴル起源ではないのですが、では何故モンゴル人はそう思っているのかというと、モンゴルには口語伝承の文化があることに関係しているらしいのです。
もともと文字を持たない遊牧騎馬民族だった彼らは、民族の神話や歴史を歌(ユールチ)によって子孫に語り継いできました。
しかし、その内容はものすごく膨大で、いったん始まると一晩中止まらないくらいずーーっと続く歌詞なのだそうです。
こんなとんでもない情報量をどうやって覚えていられるのかというと、韻を踏むことでリズムを付けて覚えるというのです、そう、ヒップホップ!
本著には例文も付されていますが、本当に息をするように韻を踏みまくってラップみたいになっているのが分かります。

彼らは伝統的に韻(=ライム)に慣れ親しんできた民族であり、だからこそヒップホップ文化が流入した時に、まるで自分達の文化のように受け入れ、大きく発展させることができたのです。

ちなみに口語伝承では頭韻が多用されるそうです。これは単語の頭の母音や子音を揃えるやり方で、他に単語の末尾の子音を揃える脚韻や、単語の真ん中の母音を揃える類韻というのもあります。
ヒップホップでは頭韻より脚韻を使ってリズムをとるそうです。
なのでモンゴルにおけるヒップホップの最初期は、頭韻で構築されたMCが多く、そのあと脚韻のMCが増えていく……という独特の音楽史を歩んだそうですよ。

新しく入ってきた文化と、もともとあった伝統文化がこれほどベストマッチするなんてこと、現実にあるんですね。なんだか日本の俳句・短歌の文化とTwitterとの親和性を思い出しました。

今では一大ヒップホップ生産拠点となったモンゴル。
本著に良曲がたくさん紹介されているので、ぜひ聴いてほしいのですが、やりすぎるとyoutubeの広告が全部モンゴル語になってしまうので注意です。

それでは!

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