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逆光の棚|アルミニュームの棚システム LATTICE 2016

僕のアイディアは技術的発想であることが多い。職人の場合は、素材があって、その素材の加工を通じて技術が磨かれ、魂にまで到達するのだが、僕もそれに似ている。素材が先ずある、それに伴って技術的発想が生まれるのだ。多分、僕は素材にある種の「魂」を感じているのだろう。素材への思いが強くて、それが出発点になる。最初に夢中になったのがゴムだった。多分25才位の年齢だった。そこからさまざまなゴムの作品が生まれている。

ゴムの次にはFRP、アルミニューム、そしてチタン・・・と僕の関心は様々な素材に広がっている。FRPは太陽工業とパンドラというカプセルハウスが生まれ製品化しているのだが、アルミニュームには苦戦している。いつも企業からの依頼で始まるのではなく、素材への想いから始まるのだから簡単には製品化が進んではいない。それでも、アイディアを日鉄カーテンウォールに持ち込んでアルミニュームの別荘システムが生まれたし、TANASという名で棚システムが生まれた。

ここにあるのはそこから発展して中国で製品化された新しい棚システムである。LEDが登場したおかげで照明を棚板に仕込むことができた。
逆光の美しい棚で、製品化というより、さまざまなプロジェクトでこのデザインを展開している。販売する会社は僕が中国人と組んで作った会社だから本気で売る組織もなく、僕が何かに使うだけだという作品である。

アルミニュームの美しさは別のチャンスにも書いたのだが、ウィーンの空の光る雲に似ている。その輝くグレーが好きだったのだが、精錬に電気が必要でどうしても価格が上昇する。精緻なディテールで繊細なデザインが可能なのだがこれが大きな欠点となっていつも製品化を拒む要因になってもいる。現在は中国で製品化し在庫している。

棚を支える縦の部材が実は二つに別れている。要するに半分に縦割りした側板の部品が左右に二つ、真ん中で支える複数の棚板が一つの単位になっていて、それを連続させるのである。半割の縦部品がここで初めて一つの側板になる。

単独に使う時には左右の最後の縦パネルにそれぞれもう一枚の縦パネルを添えればいいだけなのだ。照明が入ると棚自体はシルエットになって、その上、展示されるものもシルエットになって美しく輝きを見せる。

このシステムには僕のこだわりがあって、中国産はもう3代目か4代目になっている。どうしても諦めることができないでまた挑戦をする・・。そんな歴史が僕らしい作品になっているのだろう。次回は美意識を修正して、木製で挑戦したいと思ってもいる。死ぬまで続くのだろう。

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《黒川 雅之》
愛知県名古屋市生まれの建築家・プロダクトデザイナー。
早稲田大学理工科大学院修士課程卒業、博士課程修了。
卒業後、黒川雅之建築設計事務所を設立。
建築設計から工業化建築、プロダクトデザイン、インテリアデザインと広い領域を総合的に考える立場を一貫してとり続け、現在は日本と中国を拠点に活動する。
日本のデザイン企業のリーダーが集う交流と研究の場 物学研究会 主宰。

〈主な受賞歴〉1976年インテリアデザイン協会賞。1979年GOMシリーズがニューヨーク近代美術館永久コレクションに選定。1986年毎日デザイン賞。他、グッドデザイン賞、IFFT賞など多数。

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