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『シング・ストリート』については多くを語る必要がない

 なぜなら映画『シング・ストリート 未来へのうた』(2016、アイルランド、105分、"Sing Street")はいつの間にかプライムビデオ対象に含まれていたため鑑賞が容易であり……

……そして作品の雰囲気を完璧に掴める動画が存在するからだ。


あらすじ:1985年、大不況のダブリン。人生14年、どん底を迎えるコナー。父親の失業のせいで公立の荒れた学校に転校させられ、家では両親のけんかで家庭崩壊寸前。音楽狂いの兄と一緒に、隣国ロンドンのMVをテレビで見ている時だけがハッピーだ。ある日、街で見かけたラフィナの大人びた美しさにひと目で心を撃ち抜かれたコナーは、「僕のバンドのPVに出ない?」と口走る。慌ててバンドを組んだコナーは、無謀にもロンドンの音楽シーンを驚愕させるPVを撮ると決意、猛練習&曲作りの日々が始まった――。
(公式サイトより引用)

 上述の動画はいわゆる予告編ではない。一部に劇中映像を使用した劇中音楽のPVという、特殊な立ち位置に存在する一つの作品だ。逆に言えば、このPVを構成する場面がそのまま映画に登場するわけではない。

 なにしろ2016年という悠久の時を隔てた過去の映画であるため、ネタバレなど言いだしてもきりがない。そもそもそんなにネタバレを気にする映画でもないので、いろいろ調べてから見るのもいいだろう。スゴイ有名なレビューとかも出てくる。だが俺が言いたいことは二つだけだ。

 一つ、もしお前がこのPVを見て一瞬でも感情を揺さぶられたのなら――ご機嫌な音楽、少年たちの笑えないほどタフな青春、野暮ったいバンドメンバーがカッコよく見える瞬間、笑顔で踊る老若男女の観客に胸を打たれたのなら、映画本編を見るべきだ。その期待は完全に、かつどうしようもなく不完全に叶えられる。

 二つ、そうして映画を見終えたとき……お前はもう一度PVを見ることになるだろう。



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