見出し画像

ナイトバードに連理を Day 2 - B

【前 Day 2 - A】

(565字)

 登校直後、早矢は他のクラスを覗いて回った。A組、B組、C組の各扉から顔だけを教室に入れ、奇異の視線に耐えながら見回しては移動を繰り返したが、それでも昨日の女子生徒を発見することはできなかった。

「っす」「あーす」「……ンー」

 D組での怠惰な挨拶をこなしながら早矢は思考に耽った。生徒を探すには人が増えても減ることのない始業前が適切なはずだった。昨日は来ていた時間に姿が見えないとなれば、考えられる可能性は少ない。欠席か、学年が違うか。どちらにしろ面倒だ。早矢は傾くほど椅子にもたれかかり、天井を見上げた。昨日より到着が遅れた分、座席はすでに空いていた。

 どうかしている。早矢は自省した。昨日の今日で気になるのは仕方がないとしても、今の早矢にはそれ以上の衝動があった。明らかに、今朝の夢に影響されていた。

 見ず知らずの訪問者、秘密保持の要求、意味不明なメモ――胎金界、そして土埃の臭いまで思い出せる異世界の夢。早矢は各要素の関係性を勝手に作り出そうとする自分の思考にうんざりした。百歩譲って彼女との遭遇が異質な夢のきっかけになったのだとしても、それを本人に伝えることはあまりに馬鹿げていた。

「俺、君のせいで変な夢を見たんだ」

 犯罪的な気持ち悪さだ。早矢は想像上の自分に舌打ちし、どうにか衝動を忘れようとした。

 そしてその夜も強烈な睡魔に敗れた。 【Day 3 - Aに続く】



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?