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「Amazon経済圏」に支配されてしまえ

前回、もはや世界はプラットフォームではなく「経済圏」を作り上げているという記事を書いた。


今回は、もう日本でもすっかりおなじみのAmazonが作り上げようとしている経済圏についてまとめてみる。


Amazonといえば、まず誰もが思い浮かべるのはECだろう。

時折、「Amazonのせいで商品が売れなくなっている」とか「どうすればAmazonに勝てるか」、などといった記事をネットで見かける。

だが、Amazonが単なる大きなEC企業だと思ってはいるようでは、100%生き残ることなどできない。

戦っている土俵が違うのだ。


だって、AmazonはEC事業で利益を上げていないのだから。

Amazonの利益の多くは、実はAWSというクラウドコンピューティングサービスによるものだ。

AWSが無かったら、Amazonはとっくに倒産しているだろう(AWSの詳細については、この記事では割愛する)。


Amazonにとって、EC事業はAmazon経済圏にユーザーを取り込むための入り口のひとつでしかないのだ。

どのサービスも、それ単体で儲けようとしていないから、全てにお値段以上の価値がある。

収益は、新規事業やM&A、そして顧客の体験価値の最大化のために投資し続けている。

赤字大歓迎で投資し続けるAmazonがいる土俵で、単にオンラインで商品を売るだけで利益を上げようとするなど、愚の骨頂と言わざるを得ない。


長くなるので、先に1枚にまとめた図を載せておこう。


近年のAmazonの成長を加速させているのは、言わずと知れたPrime会員の存在だ。

ここでその魅力をわざわざ語るつもりは無いが、もはや「Prime会員にならないと損」と言われるくらいの特典内容になっている(もちろん僕も、Prime会員だ)。


Prime会員は年額制のサービスだから、会員であるということはAmazonにクレジットカード情報を持たせていることになる。

そして、その会員情報をベースに、数え切れないほどの便利なサービスを受けることができる。

もちろん、そのほとんどはモバイルだけで完結できる。

一方的にサービスを提供するだけでなく、出店・出品したり、それを評価したり、レビューに対しても評価したりと、プラットフォーム上でインタラクティブなやり取りが行われている。

経済圏」を作り上げるのに必要な3点セット、決済・認証・信用が揃っているのが分かるだろうか。


先日、無人レジのスーパー「Amazon Go」がシアトルにオープンして話題になった。

画像認識など、様々な先端テクノロジーがこれを支えているのだが、このお店のポイントは、「入店して、商品を取って、帰るだけ」でAmazonアカウントから自動的に決済されるという仕組みにある。

認証は、もちろんスマホだ。


このように、オンライン・オフライン問わず、Amazonが展開するあらゆるサービスが、同じ決済情報をベースに成り立つ

そして、Amazon経済圏には、Amazonが直接提供するサービス以外も含まれる。

日本ではまだあまり普及していないが、第三者のECサイトでも、Amazonアカウントでログイン・決済ができるAmazon Payというサービスがある。

かつて、この領域で世界標準だったのはPayPalだが、「単なる決済プラットフォーム」でしかないPayPalは、近い将来「Amazon経済圏」に侵食されるだろうと、個人的には思っている。


さらにAmazonは、Amazonに出店する販売事業者向けの融資サービス「Amazon レンディング」も提供している。

始めは小額の融資で、2回目からはAmazonでの売上実績をもとに融資の枠が決まる。

そのため、審査も非常にスピーディで、合理的な仕組みと言える。

Amazon経済圏内でのあらゆる行動データを一元管理できるAmazonは、今後もさらに金融領域へ手を広げていくだろう。


他にも、Prime会員向けのVideoやMusicのストリーミングサービスをはじめとしたメディア事業

Amazon EchoやAmazon Keyといったガジェットによって広がるスマートホーム

さらには、Amazon Home ServicesAmazon Restaurantsといった人材プラットフォームまでも米国では展開されている。


知れば知るほどその凄さがもっと分かるのだが、AWSも含めて全てのサービスが繋がっている

新規事業や買収企業の選び方、展開の順番やタイミングまで、全てが最初から想定されていたかのように、理にかなったストーリー上にある

生活の全てをAmazonで完結させることも、不可能ではなくなるだろう。


消費者としても、Amazonに世界を支配してもらうことで、どんどんQOLが高まっていると思う。

月額にしてたったの325円という料金さえ払えば、数え切れないほどの恩恵を受けられる。

Amazon経済圏」を国家に例えるなら、きっとこんな感じだ。

Prime会員:国民

Prime会員特典:ベーシックインカム

AWS利用企業:国家を進化させる企業

AWS利用料金:法人税


そんなAmazonも、実は進出している国はそれほど多くない。

核となるEC事業は、安定した物流インフラが確立している地域でしか成立しないからだ。

日本でも、Amazonが急成長したのはヤマト運輸と組んでからのことだ。


次回は、そんな物流領域から独自の経済圏を構築しつつあるUberを取り上げよう。

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