小國神社の神様はちょっとやそっとではへこたれません
静岡県の有名な神社です。静岡県民に知らない人はいないはずです。遠州地方では最大の神社である小國神社は日頃から多くの人で賑わいます。
そんな小國神社に行ってきました。お正月の混雑は避け1月16日の土曜日にお参りに行ったのですが、やっぱり混雑してました。それだけ人気の高さがうかがえます。
小國の語源は神聖なる場所
小國神社はその語源となる神聖なる場所にふさわしい雰囲気を持つ神社です。四方を森で囲まれた静かな場所に創建されました。1300年以上も前のことです。御本殿を囲むように森がありますが、この森の奥にある本宮山(標高511m)に御神霊が降りてこられたのが555年とされています。本宮山山頂には小國神社の奥宮があります。御祭神は大己貴命荒魂(おおなむちのみことあらみたま)その本宮山の南側の山麓に建てられたのが今の小國神社です。御祭神についてはまた後ほど。
実は8年前になりますが本宮山に登ったことがあります。小國神社で参拝してから、横を流れる宮川沿いを歩き(秋は紅葉の名所です)そして林道を登っていきます。サイトで調べてみると「森町ウォーキングコース歩く森町」の中のひとつのコースなのですが、このように書かれていると多少キツいウォーキングコース程度に考えていたのですが、実はとんでもない!かなりキツい山登りだったことを思い出します。
8年前にタイムスリップ GoTo本宮山!
その当時の写真が残っているかなとiPhoneの中を探してみたところ、ヘロヘロになった山登り写真が残っていました。せっかくなので8年前の本宮山ウォーキングの写真を少しだけ載せてみたいと思います。
歩きやすい山道があるかと思えば、
えぐれた山道もあり。険しい登山でしたよ。
こうやって書かれるとのどかに感じるんですけど・・・
ここまで来るとまさに神の領域という雰囲気ですね。
この杖、ことまち横町でお借りしました。ヘロヘロでしょ?(妻です)
山頂。ん?549m?標高511mではなかった?隣は503mって書かれているような・・どれが本当なんでしょう。
ヘロヘロのご褒美は絶景でした。アクトタワーも見えますね。
残念ながら肝心の奥宮の写真がありませんでした。撮ったと思ったのに・・
iPhoneの機種変でどこかに行ってしまったのかもです。
奥宮が建てられているエリアは音一つ感じないほどの静けさがありました。まさに御神霊が降りてこられた場所にふさわしい神秘さがありました。決して大げさでなく、シーンと静まりかえっていたことを思い出します。
御祭神は国造りの神、だいこくさま
小國神社の御祭神は大己貴命(おおなむちのみこと)
大国主命(おおくにぬしのみこと)ですね。だいこくさまですね。
多くのお名前をお持ちの神様なので、どのお名前で書けばいいのか迷うところです。大国主命は多くの人に親しまれたお名前なのでしょうけど、古事記に最初に登場したときのお名前は大己貴命(おおなむちのみこと)です。小國神社でも大己貴命で表記されていますので、ここは大己貴命でお話しを進めていきましょう。
大己貴命は須佐之男命(すさのおのみこと)の六代後の孫として誕生しました。日本国を創った神様です。須佐之男命の孫、こことりあえず押さえておいてください。
大己貴命にはあまりにも多くのお話しがあり、どれをお伝えすればいいのか迷ってしまいます。上の写真のように因幡の白兎のお話しは有名すぎますし、武甕槌命との国譲りの交渉で天つ神に国を譲ったお話しは前回しましたし。大己貴命にまつわる恋バナはかなりの数を数えます。モテモテだったんですね。
大己貴命に降りかかる幾多の試練
大己貴命は様々な試練が降りかかったことで知られています。八十神(やそがみ)という兄弟の神様たちからは荷物持ちやらなにやらと顎でこき使われていました。それはもう理不尽な扱いをされてきたのです。
ある日、八十神たち全員である一人の女性へ求婚するための旅に出ました。もちろん大己貴命は荷物持ちです。その女性は八上比売(やかみひめ)といって因幡の国の女神様です。一行が出雲から因幡に向かう旅の途中に、あの「因幡の白兎」の話しがあるのです。
ワニに皮を剝(む)かれて赤裸の兎に八十神たちは「海水で傷口を洗って風に当てれば治る」ととんでもないことを教えます。むごい、なんてむごいことをする神様なんだ。それで治るはずもなかろうに。その後に通りかかった大己貴命は本当の傷の治し方を教えて兎を助けます。で兎は「八十神はだれも八上比売を射止めることはできませんよ。あなたが八上比売のハートを射貫きますよ」と預言し、それが見事に的中します。
そうなると必然的に兄弟の恨みが大己貴命に向けられます。「帰り道の途中に赤いイノシシが出るからおまえ退治しろよ」と命令し、それを引き受けた大己貴命にしたことが、真っ赤に燃える巨大な岩をイノシシと偽って山の上から落としたのです。その岩を受けとめた大己貴命は大やけどと岩に押しつぶされたことで死んでしまいます。これがひとつ目の試練です。
大己貴命の死を悲しんだ母親の刺国若比売(さしくにわかひめ)は高天原にいる神産巣日神(かみむすびのかみ)に救いを求めました。神産巣日神はその願いに応え、大己貴命は復活します。
大己貴命殺害計画
八十神はまたも大己貴命殺害計画を企てます。どんだけ憎いんだ!と思わず声を上げてしまいそうになります。これは八十神たちと大己貴命が異母兄弟の関係によるものとされています。それでもってお嫁さん候補の女神様に八十神全員がフラれるのですから、その怨念たるや凄まじいものがありますね。古事記によくあるドロドロの展開です。
ふたつ目の試練、大己貴命殺害計画の全貌は大木を上から途中まで縦に切り裂いてくさびで留めておき、その裂け目に大己貴命を立たせた瞬間にくさびを外し挟み撃ちにする作戦です。これまた母親に助けられ失敗します。さすがにこれ以上ここにいるといつ何時命を狙われるかわからないと悟った母親は大己貴命を木国(和歌山県)の大屋毘古神(おおやびこのかみ)のところに逃がします。(大屋毘古神は木の神様です)それでも尚追ってくる八十神たちを見た母親は、須佐之男命がいる根の堅洲国(ねのかたすくに)に行かせることを決意します。
根の堅洲国は現世のあらゆる罪・穢の集まる所とされています。つまり死者の国ですね。
須佐之男命がそこにいることには理由があります。須佐之男命は天照大御神の弟にあたります。根の堅洲国(黄泉の国と同一との解釈あり)にいる母伊邪那美命(いざなみのみこと)が恋しいあまりに、任された仕事を何もせず泣いてばかり。挙げ句の果てに母がいる根の堅洲国に行きたいとダダをこねたことで伊邪那岐命(いざなぎのみこと)の怒りを買ってしまい、天つ神の身分を剥奪され追放されてしまいます。
その後も高天原で天照大御神と一悶着あり大暴れ。天照大御神が須佐之男命の大暴れに恐れをなしてしまい、岩屋戸に隠れてしまうお話しが「天の岩屋戸」騒動です。
この騒動で須佐之男命は高天原から完全に追放されることになります。追放され地上に降りた須佐之男命はヤマタノオロチを退治します。ヤマタノオロチを退治した剣はその後天照大御神に献上されます。三種の神器のひとつ、草薙の剣です。
その時に出会った櫛名田比売(くしなだひめ)を妻とし、母のいる根の堅洲国に赴くことになります。
ヤマタノオロチを退治した作戦は現代に甦りゴジラをも退治する
ちなみにシン・ゴジラに出てくるヤシオリ作戦のヤシオリは、ヤマタノオロチを退治するときに飲ませたお酒の名前です。(八塩折) 神話ではヤマタノオロチにヤシオリを飲ませて眠らせた隙に退治します。シン・ゴジラでは血液凝固剤と抑制剤を口から飲ませてゴジラの活動を止めてしまいます。この作戦をヤシオリ作戦と命名しました。眠らせると活動を停止させることが共通点ですね。東京都内を走る列車を利用した爆弾攻撃と米軍の無人航空機隊の攻撃で消耗させ、高層ビルの崩壊でゴジラ転ばせる作戦は迫力ありましたね。どこか滑稽な感じがありながらも、もしリアルな世界にゴジラが出現したら、ウルトラマンが助けてくれるわけでもないし、ああいう作戦しかないんだろうなと思ったものです(笑)
大己貴命に課せられた究極の試練
さて、須佐之男命のもとに逃げ込んだ大己貴命。今度はその須佐之男命からの試練を受けることになります。
須佐之男命の娘の須勢理毘売命(すせりびめ)と運命的な出会いをし恋に落ちます。出会ったその日に激しい恋に落ちる大己貴命と須勢理毘売命。とても情熱的ですが、因幡にいる八上比売はいいんですか?日本各地に恋バナを咲かせている恋多き神様としても知られる大己貴命。うらやましいくらいモテモテですね。
娘が連れてきた大己貴命に須佐之男命が課した試練は、
①「蛇の室屋で寝ろ」これは須勢理毘売命に助けられなんなくクリア。
②「ムカデと蜂の室屋で寝ろ」これも須勢理毘売命が助けで余裕のクリア。
「なかなかやるなコイツ」いや、どれもあなたの娘の手助けですよ(笑)
ならばこれはどうだと
③「野原に鳴鏑を放つから取ってこい(火攻めにするけど覚悟してね)」(鳴鏑:なりかぶら 弓矢の矢のようなもので、放つと音がするもの)
今回ばかりは須勢理毘売命の手ほどきは受けられません。燃えさかる炎が大己貴命を襲います。大ピンチです!
するとそこに現れた鼠がこう言います「内はほらほら、外はすぶすぶ」
内側はほら穴になっていて、穴の入り口はすぼまってる(狭い)という意味です。それを理解した大己貴命は穴の中に入り炎をやり過ごします。そして言いつけとおりに鏑矢を差し出します。
さすがの須佐之男命もこれには驚きです。なんというやつだと思いながらも、もう半分くらいは認めています。だからといってそのまま認めてしまうのもシャクに触ったのでしょうか。四つの目の試練を与えます。
④「ワシの頭にいるシラミを取って口で噛み殺して吐き出してね(シラミって言ったけどホントはムカデだからね。グロいよ。君にできるかな?知らんけど)」
さあこの最大の難関をどう突破する?でも大丈夫。そんな時こそ須勢理毘売命の出番です。椋(むく)の実と赤土を手渡して、口で噛み吐き出せば須佐之男命も本当にムカデを噛み殺していると思い込ませる作戦に出ます。以心伝心ですね、このお二人。
せっせと椋の実と赤土をカミカミして吐き出す大己貴命に「こいつ、かわいいやつめ」と完全に油断して寝入ってしまう須佐之男命。大己貴命が「これ、ワンチャン行ける?」と言ったかどうかはわかりませんが、その隙を狙って脱出を図ります。政治の支配権に必要な須佐之男命の生大刀と生弓矢を。信託を受ける際に必要な須勢理毘売命の天詔琴(あめののりごと)を持ち出し、須勢理毘売命を一緒につれて逃げ出しました。須佐之男命が追って来られないように髪の柱に縛り付けることも忘れません。
しかし持ち出した琴が木の枝に触れてしまい大音響が鳴り響きます。その音に気づいた須佐之男命でしたが髪を縛られているので動けません。やっとの思いで髪をほどき、追いかけてきたときにはお二人はもう、根の堅洲国の出口まで来ていました。
須佐之男命はもう、娘の須勢理毘売命と大己貴命の仲を認めていましたので、お二人が持ち出した生大刀と生弓矢を指差し、「ワシの生大刀と生弓矢で八十神どもを追い払え!そして地上の国を治め、大国主命と名乗り、娘を正妻とし、宇迦山(出雲大社の近くの山)の麓に高天原に届くような立派な宮殿を建てて立派な国をつくれ!こいつめ!!」と命じられました。
こうして幾多の試練を乗り越え、大国主命として国土に土着する神として君臨していきます。試練を乗り越えたとはいえ、この先も受難が待ち受けています。出雲の国譲りしかり(武甕槌命に強引に国を譲れと脅されたり)女性関係でのトラブルしかりです。(ここからは大国主命で書いていきますね)
しかしその本質は誰にでも思いやりと優しさで接することができ、多くの人からの信頼も厚く、親しまれた神様なのだと思います。しかも国造りをやり遂げた神様です。小國神社の御祭神は幾多の試練を乗り越えてきた立派な神様を祀られているのです。
それにしても須佐之男命とのやりとりはすごかったですね。須勢理毘売命の献身的なサポートもあって見事に試練を乗り越えましたね。でもちょっと待ってください。大国主命は須佐之男命の六代目の孫でしたよね?えっ?娘婿は孫ってことですよね?自分の娘と孫が結婚ってことですよね?
うーん、これ以上は立ち入らないことにしましょう。
小國神社の御利益は幅広い
小國神社の御利益は幅広いものがあります。国土開発は御祭神が執り行ってきた国造りからもおわかりになるように、豊かな国をつくることをお護りしてくれます。
小國神社がある森町は「遠州の小京都」と呼ばれています。室町時代に各地の大名が京都を模倣した町づくりをしたのが起源とされています。大国主命は国つ神(地上の国を統治する神様)の代表格です。トップに君臨しています。京都に似た町をつくり、この地を豊かにしたいという思いは大国主命に届いていたことでしょう。
他にも福徳・縁結び・山林・農業・医薬・知徳剛剣の守護神として敬られています。特に医薬の守護神としては因幡の白兎のお話しでもその片鱗を見せていますね。塩水と吹きさらしの風にあたり真っ赤にただれてしまった兎に「真水で洗い流して蒲の穂の花粉を傷口にまぶせば治るよ。蒲の花粉は傷口に良く効くからね」とこの当時から医学に精通していたことがうかがえます。
縁結びの神様と敬われる理由はとにかくモテたことに尽きるでしょう。大国主命は正妻(須勢理毘売命)と側妻(そばめ:八上比売)だけでは飽き足らず、全国へ奥さん捜しの旅に出ます。そして美しい女神と出会うごとに求婚し妻としていきます。そして子をもうけます。その数なんと!180柱(神様は一人二人と数えずに、一柱二柱と数えます)どれだけ色男だったのでしょう。今では許されることではありませんが、妻としたどの女神も愛された大国主命は縁結びの神様としてふさわしい?のかもしれません。
四季を楽しませてくれる小國神社
春は満開の桜があたりをピンク色に染め、秋は真っ赤に染まる紅葉を楽しませてくれる小國神社です。年間を通して多くの参拝客が足を運びます。私も年に何度かはお参りしています。多くの人に愛され、多くの人が集まり、集まった人を豊かな色合いで迎えてくれる小國神社へぜひお出かけください。
本宮山に登るならそれなりの身支度をお忘れなく。歩きやすい靴も必須ですからね。
Photobook of Okuni Shrine
初夏の小國神社
秋の小國神社
事待池
小國神社で願掛けをして心願成就すれば池に鯉を放つことから「ことまち池」という名前が付いたそうです。
池の水を汲んでいぼに付けるといぼがとれることから「いぼとり池」ともいうそうです。
ことまち横町で見かけたこんな話題。
私も毎日お茶飲んでますよ。
御朱印いただきました
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