全員が主人公だと知って、服を捨てた、生き物みたいな湯は、裸の私だけに話しかけてくれる。

湯気に消えそうな故郷の声、できるだけ身体を乗り出して、黙って俯く夜に、あの頃の私が幸せでありますようにと祈った。
細かい雪が頬に当たって、一瞬、今まで貰った言葉達が遊び回って、溺れていたかった、コンパスで掘った足の傷も、ぜんぶ笑い話の中。

皮膚が剥がれるように、私の透明な部分だけが溶け込んで、このまま、私だけの宇宙に逃げそう、手ぶらはずっと怖い。
私が死んでもあなたが主人公でいてください、私を失ったあなたへ、この祈りが素肌のまま、みんなと同じで、生きていけますように。

好きと言われた、そんな感じ。