エッセイ⑥高2の文化祭でMCを任され滑った話

文化祭。多くの皆さんにとって青春時代の思い出のイベントであろう。
世間一般とは少し変わった、ある一年の私の文化祭の思い出を皆さんにご紹介したい。

中高一貫男子校における文化祭。
運動部が食べ物屋を出店する、文化部がそれぞれ展示する、やりたい奴らがカフェやお化け屋敷を出店したりバンドを組んで演奏する。
ここまでは共学と同じだが、我々の文化祭には女子がいないので、そこに非日常感こそあれど、クラス単位でなにかをしてやる気のある女子とない男子みたいな全員が味わえる青春の旨味はない。
ごく少数の女子高生が訪れては1軍たちが群がりナンパしていていたり、彼女を呼んでいる一軍たちを我々1軍以下は、あんなブスをナンパとかダセえよな、あんなのが彼女かよとか言いながら、階段を上がるその女子高生たちのパンツを見ようと下からひたすら上を見上げていたりしていた。

後夜祭とかもあったが、高1,高2の兄さん方が楽しむイベントって感じで中学時代は怖くて行けず、高校に入ってもナンパして一緒に女子と参加とかもできるわけでもなく、男だけで何の青春だよと思って全然参加してなかった。特にバンド組んでる奴らなんかには、なにかっこつけてんだって内心めちゃくちゃ馬鹿にしていた。
もしかしたら高2の時だけ参加したかもしれないが全く記憶にないしステージには立ってない。

私が所属していた軟式テニス部では毎年焼き鳥屋を出していて、割り振られたシフトのみ、焼く際の煙に涙を流しながら働いていた。
そんな中で高1になった時にある事件が起きた。私は5組だったのだが知らぬ間に1組でカフェを出店していてそこに部活の同期の大半が参加していた。
カフェで忙しくなった同期に激しい疎外感を感じ不貞腐れながら、その年はたこ焼きをひたすら一生懸命作った私。あいつらのシフトもほぼこなし終日働きっぱなしだった気がする、今でも許せない。

見かねた同期が翌年誘ってくれたのは今度はカフェではなくある企画。
卵を屋上から落としても割れない容器を作る、その名も「エッグドロップコンテスト」という受験生の小学生向けの企画だった。
1組の担任だった物理の先生が東工大の学祭で見て発案したものだったようだ。
そもそも企画も意味不明だし、この企画の中心メンバーは部活の同期だけではなく1組の相当地味なメンバーがずらりと揃う。
友達でもない二軍集団に混ざりたくないなと思いながらも、また焼き鳥を焼くだけの文化祭にはしたくなく準備に参加していたら「おいお前、司会やってくれないか?」と周りから声をかけられる。
「は?」と思って周りを見渡したが、しゃべれそうな奴が明らかに私しかいない。私も私で喋れる方ではなく、低くて通らない声なので、ボソッとたまに一声言うみたいな方ではあったものの仕方なく引き受けることに。

迎えた当日。グラウンドの反対側ではメインステージがあり、部活対抗のイベントなどが行われている中、真反対の端っこでひっそりと我々のイベントが開催される。

確か午前中にどこか教室で参加者を募って容器を作ってもらって、午後に実際に落とすイベントを開催って感じだった気がする。

MCとして、グラウンドで周囲を呼び止め、企画の説明から行うのだが、拡声器を使っても声も通らないので全然人が集まらない。

というか午前中に作って午後に落とすという時間拘束の激しさや、容器づくりの工作が難しそうというハードルの高さから、そもそも参加者も全然いなかった。

ようやく何人か観客が集まったが今度は屋上でのスタンバイの時間感が合わずに間が空く。
今書きながら思うと事前に通しリハとかやっておけばというところだったが、やってたのかな、にしては当日やたらバタバタだったんだよな。

参加者への意気込みを聞いたりなどでなんとか繋いでカウントダウンして落として、割れた割れてないとなって、当人に感想を聞いたりするのだが、これ結局私含め当人以外に結果に興味がないからあんまり盛り上がらない。
とにかく薄っすらとずーっと滑り続けていた。

何人かをこなしながら心も折れかけてきたときに、メインステージのイベントを終えた一軍たちが通りかかった。
「おい○○(私の名前)何やってんだ」とヤジが来る。これがまあ助かった。
そいつらとの掛け合いみたいな形で場が成立するような恰好になり、そこそこの盛り上がりのままにイベントが無事終了したのであった。

このずーっと薄っすら滑りながら進行をした経験から、人前で何かを進行したり、長尺でしゃべりたいという欲がその後一切なくなってしまった。もちろんやれって言われたらやるけど。

お笑い芸人さんはもちろんイベントや結婚式とかの司会とか、人前で何かできる人って実は凄いんだなと、たまにこの文化祭を回帰しては思い直している、そんな話でした。

お読みいただきありがとうございました。

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