薬物乱用頭痛とは?原因や診断基準をわかりやすく解説
最近頭痛薬を飲んでも効かない、むしろさらに頭痛が増えてきたと感じてはいませんか?
それはもしかしたら「薬物乱用頭痛」になりかけているのかもしれません。
痛みを取ってくれる頭痛薬ですが、その使い過ぎは逆に頭痛を悪化させてしまうこともあるのです。
本記事では薬物乱用頭痛の原因と対策について、頭痛歴10年以上のライターが詳しくお伝えします。
本記事を読むことで、薬物乱用頭痛の対策法や月に何錠までなら頭痛薬を飲んでも大丈夫なのかという基準がわかります。
ぜひ最後までご覧ください。
薬物乱用頭痛とは?頭痛薬の飲み過ぎが起こす罠
薬物乱用頭痛とは、頭痛薬の飲み過ぎで起こる頭痛です。
薬物乱用という名前から違法な薬物をイメージしてしまうかもしれませんが、全く関係ありません。
薬物乱用頭痛は、通常使用する分には害のない一般薬から起こります。
最近ではその名称が誤解を生むため「薬剤の使用過多による頭痛」と呼ばれることもあります。
当てはまると危険信号!薬物乱用頭痛の症状
薬物乱用頭痛には特徴的なポイントがいくつかあります。
以下のような症状があれば、薬物乱用頭痛である可能性が高まります。
頭痛薬が効かなくなる
はじめは痛みを取るように働いていた頭痛薬がだんだんと効かなくなり、そのうち「頭痛薬を飲んでも頭痛がする」という状態になります。
痛みを抑えるために頭痛薬を飲むが、その頭痛薬がまた頭痛を引き起こし、また頭痛薬を飲み……という負のループに陥ります。
痛みの閾値が下がる
痛みの閾値が下がることも薬物乱用頭痛の大きな特徴です。
少しの痛みでも大きく感じるようになり、ちょっとしたことでも頭痛を感じるようになってしまいます。
起床時にも頭痛がする
目が覚めた瞬間から頭痛がする場合は薬物乱用頭痛である可能性が高いです。
起床時の頭痛は薬物乱用頭痛の特徴のひとつであり、ほかの頭痛(緊張型頭痛や片頭痛)などと見分けるポイントになります。
薬物乱用頭痛の原因は「頭痛薬の使い過ぎ」
薬物乱用頭痛の原因は頭痛薬の使い過ぎです。
はじめは痛みを取るように機能していた頭痛薬が、常用することによってどんどん効かなくなってしまうのです。
薬物乱用頭痛の多くは市販薬の使用により引き起こされますが、医療機関で処方される薬剤でも薬物乱用頭痛は起こり得ます。
このような薬を使えば使うほど痛みが悪化するという症状は頭痛に特徴的なもので、それ以外の疾患では見られません。
薬物乱用頭痛の原因の9割は市販薬
薬物乱用頭痛の原因の最たるものに「市販薬の乱用」が挙げられます。
市販の頭痛薬は何種類かの成分によって構成される「複合鎮痛薬」と呼ばれる薬剤であり、この複合鎮痛薬は薬物乱用頭痛に繋がりやすいのです。
また、市販の頭痛薬の中には無水カフェインを含んでいるものが多いことにも注意が必要です。
無水カフェインが含まれている頭痛薬は、より薬物乱用頭痛を悪化させやすい傾向があります。
市販薬を常用する人は頭痛外来などの専門病院に罹らず、自力で対処されている方が多いことも薬物乱用頭痛に繋がりやすいポイントといえます。
専門医の指導がないまま頭痛治療を継続してしまうと、適切な使用量を超えた数の頭痛薬を服用してしまいがちであり、薬物乱用頭痛になりやすいのです。
カロナール、トリプタンなどの処方薬にも注意が必要
病院で処方される頭痛薬であればいくら飲んでも大丈夫かというと、そうではありません。
カロナールやトリプタンといった処方薬も、多く飲めば薬物乱用頭痛を引き起こします。
とくにトリプタンは片頭痛治療の専用薬として多く処方されていますが、上で挙げた複合鎮痛薬と同じくらい薬物乱用頭痛リスクの高い薬剤です。
日本頭痛学会のHPによると、複合鎮痛薬(市販の頭痛薬)の許容ラインが服用日数10日/月であるのに対し、トリプタン製剤の許容ラインもが服用日数10日/月となっており同程度のリスクがあることが伺えます。
薬物乱用頭痛の診断基準 月10日以上は要注意!
薬物乱用頭痛の診断は、次の複数の項目をすべて満たすことによって行われます。
1.以前から頭痛持ちで、月に15日以上頭痛がある。
2.1種類以上の頭痛薬を3か月を超えて定期的に乱用している。
3.ほかに最適な病気の診断がない。
各薬剤の服用日数についてはこちらを参照(日本頭痛学会HPより一部引用)
アセトアミノフェンというのがカロナールです。
専門医の指導が重要 薬物乱用頭痛の治療
頭痛に対処するための頭痛薬が更なる頭痛を引き起こす原因となってしまうという性質上、薬物乱用頭痛の治療は非常に困難を極めます。
そのため「薬物乱用頭痛かも」と気づいたらできるだけ早めに頭痛外来などの専門医の診察を受けることが大切です。
専門知識の豊富な医師と相談しながら治療を行うことで、徐々に改善できる可能性があります。
頭痛ダイアリーを使用する
薬物乱用頭痛を治療する上で必須になってくるのが、頭痛の記録です。
いつ、どのくらいの強さの痛みが起こったのか、薬は何を飲んだのかなどを記録しましょう。
医師と治療内容のすり合わせをする際にも役立ちます。
最近では簡単に記録をつけられるアプリもあるので、自分に合った記録方法を探しましょう。
冷やす、横になるなどの代替療法で凌げるなら凌ぐ
薬物乱用頭痛の原因は頭痛薬の使い過ぎなので、なによりも頭痛薬の服用回数を減らすことが求められます。
しかし、つらい頭痛を薬なしで乗り切るのは至難の業。
そこで、薬なしでも楽になれる代替療法を普段から用意しておきましょう。
具体的にはアイスノンで頭や首を冷やす、早めに横になるなどです。
自己判断で勝手に薬を減らすのはNG
注意していただきたいのは、いくら薬物乱用頭痛が心配でも自己判断でいきなりすべての頭痛薬をやめることは避けていただきたいという点です。
突然それまで飲んでいた頭痛薬をピタッと止めてしまうと、「反跳頭痛」というまた別の頭痛が起こるようになってしまいます。
薬の増減は必ず主治医と相談の上、慎重に行ってください。
まとめ:頭痛薬の服用回数が増えているなと感じたら頭痛外来へ
ここまで薬物乱用頭痛についてお伝えしてきました。
要点をまとめると以下の通りです。
薬物乱用頭痛の原因は頭痛薬の飲みすぎ
薬物乱用頭痛の原因のほとんどは市販薬だが、処方薬でも起こり得る
NGラインは市販薬で10日/月、カロナールで15日/月
治療には専門医の指導が必要
代替療法などを使ってできるだけ薬を減らす必要がある
自分が薬物乱用頭痛かな、と思ったらなるべく早めに頭痛外来に罹ることをおすすめします。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば嬉しいです。