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私の恋愛

私は22歳の時初めてまともに人を好きになった。
社会人になり、職に慣れてきた頃で、でも職場が変わった時だった。
相手は変わった職場の隣に座っていた先輩。でも彼は結婚が決まっていた。
最初の印象は怖そうな人、顔が好きだな、だった。
すぐに結婚し既婚者になったその先輩とはなかなか仲良くなれなかった。特殊な部署でその部署自体は3人しかおらず、近くの部署とかなり連携をとっていたが、やっぱり自分の部署の中での関係は大事で。私の部署はその先輩が1番近い立場の人であったので、そこと会話が盛り上がらないのは居心地が悪かった。かなり気を遣う職場で精神的に疲れ切っていた、その職場で過ごして3ヶ月経った時、ほとんど会話のなかったその先輩が2人の時にいきなり話しかけてきた。
「俺、九州チャリで一周したことあるんだよね。」
急に何を話すかと思えばそんなことをつらつらと話し出す先輩。この先輩もきっと居心地が悪かったから先輩なりに盛り上がる話題を話してくれたんだろう。私はハハハと愛想笑いを含めながらその話を聞いていた。でもこの会話がきっかけで今までのだんまりはなんだったんだろうと思うほどにとても仲良くなった。どんどん仲良くなり、私は簡単にこの先輩のことを好きになった。3人の部署、1番近い先輩、話が合う、一緒にいて楽しい、これまでに恋愛経験のなかった私にとってはとても楽しい片想いだった。でも私は忘れていない。彼が結婚したばかりだということを。
もちろん気持ちは一生伝えまいとその気持ちに気づいてからも相変わらずの態度をとっていたし、向こうも仲の良い先輩後輩の間柄として接してくれた。出勤が楽しみになるほど居心地が良くなってきた頃、先輩が「うち来る?」と言ってきた。奥さんは妊娠しており、里帰りをしているとは日常の会話の中で聞いていた。まさか、と思った。冷食しか食べてないとかあれこれ言って私を家に呼ぼうとしている先輩をみて怖くなった。でも断ってこの最高の職場を失いたくない、仲が悪くなりたくない、と思った。仲の良い友達に相談して、ご飯を作って帰ってくると宣言して先輩の家に行った。本当にご飯を作って帰っただけだったが、奥さんの居ない家に入った罪悪感でその日は眠れなかった。
次出勤する日はドキドキした。先輩の顔をみるのがなんだか怖かった。先輩は何事もなかったかのようだった。少し冷たくなった気がした。
少し距離を置かれた先輩に寂しさが募っている時、とてもよくしてくれる先輩というより上司というくらいの方が近くの部署に来た。やたらに私を可愛がってくれて、最初は怖かったが、先輩が少し私から離れていて寂しさが募っていた私にとって、その無条件の優しさはとても居心地が良かった。
その上司の方に休みの日に出かけようと言われ、断りきれず出かけた。とんでもなく楽しかった。たまに休みの日も会うようになった。私の職場にもたまに来てくれたり、すごく仲が良くなっていった。その上司と仲良くすればするほど、先輩は冷たくなっていった。
遂に、私は上司の方と関係を持った。その脳裏には先輩がいた。でも私には届かない人だし、これで良いと思った。
だが、この上司は既婚者だった。あまりにも良くしてくれるのでバツイチなんだと思っていた。大きな間違いだった。こんな間違いをしたくなかったから先輩との関係も諦めたのに、何をやっているんだと思った。少し自暴自棄になっていた。
そんなある日、先輩と職場で2人になった。先輩に冷たくされているのに慣れていた私は特に話を振るわけでもなく黙って自分の業務をこなしていた。すると先輩が急に「俺の本当の気持ちわかる?」と言ってきた。なんの話なのかすら分からず、困っていると「わからないのか?」と言われた。何のことなのかすらわかりませんと答えたらかなりの間を持たせて先輩が言った。
「俺、お前のこと好きだよ」
フリーズした。え?今なんて?何を言ってるの、今更。と思った。今更なのは私の勝手だがもう何もかも遅かった。
先輩はこう続けた。
「俺じゃお前を幸せにできんから、距離おいたのわかんなかったの?なのにお前はなんであんなやつと仲良くしてるの?あいつも結婚してるでしょ。じゃあそれなら俺で良いじゃん。」
先輩に届かないと逃げた先が既婚者だった私に、先輩が自分との不倫を唆していることも、冷たくされてる理由にそんなことが含まれていることももう全部ショックだった。
私なんかもう先輩に好いてもらえる後輩じゃないし、もう全部手遅れで、悲しかった。でも先輩の好きという言葉はとても嬉しかった。
その告白の後、相変わらず先輩は冷たかった。でも2人になった時少し優しくなるのが嬉しかった。でもちょくちょく現れる上司をみると不機嫌になった。それがわかってもなお、私はその上司にへつらっていた。
そんな日々が続いていた時、また先輩と2人になる時があった。先輩は、「あんなやつのことが好きなの?」と言ってきた好きとかじゃないですと答えた。「今優しいだけのやつがお前を幸せにしてくれると思ってんの?」と言われた。ぐさっときた。その通りだった。寂しいからって何もこの先を思ってくれてない上司との関係に悩んでいたのも確かだった。

そんな先輩とそのあと半年ほど仕事を一緒にして、先輩は転勤した。先輩と過ごす中で、これ以上冷たくされないように私はその間に上司と終わったことにしていた。私は先輩の気持ちを踏み躙った。寂しさが本当に好きだった人よりも勝ってしまって、上司に甘えた。人間は弱いと思った。そのあとその上司は他に女ができたらしく私はあっさり裏切られ捨てられた。自業自得だ。

そんな私も25歳になった。あれ以降好きになった人もいないし、こんな私だ、もちろん恋人はいない。
でもいつか結婚したいし、幸せになりたい。この恋愛経験のなかった私が最初に恋愛まがいなことをした相手が既婚者だったことはかなりのトラウマだが今は経験だったとプラスに考えている。上司からの上部の優しさでも救われたこともあったし、先輩には好きなら離れることも好きだからこそあるということも学ばせてもらった。先輩は途中からあまりに冷たかったので本当に好きだったのか?と今では幻のようだがきっと不器用な人だったんだと美化している。

恋愛はきっと人生において主役ではなく豊かにするための脇役なのだが、特に女の子はよくこれで悩むと思う。私もその1人だし、世の中私の悩みなんかよりもっと悩んでる人もいると思うが、悩み方や辛さの感じ方も人それぞれだ。そんな日々頭を悩ます恋愛だが一人ひとりにとっていつか楽しくて幸せなゴールが待ち構えていますように。 

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