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そのキャラメルの中には

暑くもなく寒くもない、カラッと晴れ、肌を風が優しく止めどなく撫でる
鳥の鳴き声が遠くに向かう車の音と共に流れていく。
自分を無視して繰り広げられる朝に、朝から、すでに引け目を感じている。

美しい世界に囲まれているのに
雲が流れる青い空が広がっていても
心の中には滝壺の渦がトグロを巻き、不快なほどの苦しい雨が殴りがかり、胸が不躾に鷲掴まれて身動きが取れない朝。

家を出ると、そのヘドロはますます粘着質になり、全身にベタべタまとわりつき、その重さに耐えかねて、ついに足が止まる。
今来た道しかもう歩けるところがない。
不安定な吊橋を戻ってきた、小さな子リスは怯えていた。

わたしは祈ることしかできない無力な親だ。
わたしにはあなたをあそこへ運ぶ術がない。
あなたの足にはなれない。
あなたの目にも耳にも声にも心臓にも。
それらを動かす術はわたしにない。

わたしはせめて小さなキャラメルに狼を込めた。
この中には狼がいるの。
あなたを妨げる闇に唸り闘いあなたの代わりにあなたを守る野生の狼が。
それは雌。それは母。それは男。それはわたし。

小さな口に放り込み目が輝くのを見届ける。
信じられないかもしれないけど、あなたの力をみくびらないで。
本当のあなたはそんなものじゃない。
それは本当の姿ではない。
あなたがこんな小さな体に収まりきれるわけがないことを、わたしはずっとずっと見てきたから知っている。
あなたの近くであなたの目より耳より肌より。

あなたの大きさに怯えたわたしの愚かさを超え、わたしの想像の範疇を蹴散らし、わたしの胸から助走をつけて跳び上がり、その羽根を動かし空を飛ぶ喜びに震えなさい。

震えなさい。


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