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カンターレ・クリスマスイブ

息子が毎朝、飛び起き、ツリーの前まで猛ダッシュし怒り心頭したあと、悲しみの雄叫びをあげる。

サンタが手紙を持っていってくれないのだ。

どうやら今年のサンタは、息子については、まだ様子見してるらしい。

涙はすぐ乾いて、「うちには煙突がないのにサンタ入れるのかなぁ?」と聞いてきた。
「大丈夫!お風呂場の換気扇口から入れるから。」と答えると、もうブロックに夢中になっていた。
「サンタには煙突要らないんじゃない?サンタって幽霊みたいなものだよね〜」と呟きながら。

たしかにそうかもしれない。

今年のサンタは慌てん坊で、わたしにもすでに大きなプレゼントを贈ってくれた。

昨年の今頃は実家の家業に関わり、小規模事業者持続化補助金を採択され輸入許可や販売に伴う法書類と格闘していた。

一年経つと、あの時は、忍び寄る恐ろしい亡霊を祓う薙刀を、必死で磨いていたような時だった。
出来ることをやり尽くし、事業のふん詰まりという、時限爆弾を抱えた亡霊の群に特攻する心境だった。

この年の瀬には、あの時限爆弾が今や、ピンポン球くらいの大きさになったことを、父は嬉しそうに話してくれた。

子どもを育ててきて良かったのか、子どもがいて大変だったのか、その答えは父の胸の中で大きな波のように寄せては戻る。その波の音は電話越しでもよく響く。

年末に父娘の立たせた波を見つめるのは、あと何回もないだろうけど、たしかに、今だけの、親と子どもの時間を過ごしている。

サンタはくる。と、わたしは息子に、多分何才になっても言うんじゃないかな。ついでに、作為のない贈り物を受け取れる日はクリスマスだけじゃない、って。