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【book】きらきらひかる

久しぶりにnoteを開いてみたら、『#人生を変えた一冊』という言葉が見えた。私の人生を変えた一冊は迷うことなく『きらきらひかる』だろう。

江國香織さんの小説で、私の愛読書。
年に1回はなぜか手に取って読み返してしまう。
多分私を引き寄せる魔力があるのだろう。
私の人生を変えた一冊を発信したってきっと読む人はいないかなと思うけれど、改めて私が『きらきらひかる』を好きな理由を振り返りたいので残してみようかと思い立った。


アルコールに依存気味の笑子。笑子の夫で医者の睦月。睦月の恋人の紺。
3人の日常が描かれている。

この本に出会ったのは3、4年ほど前。
叔母が昔好きだった本だと言って紹介してくれた。
私は叔母が大好きで叔母の好きだった本を私も同じように読んでみたいと思ったことがきっかけだった。

ちぐはぐな3人が作り出す空気感がとても穏やかで暖かくて、素敵な人に囲まれて暮らしている3人が大好きになった。
読めば読むほど、人間臭さが感じられて、それにもまた好きという感情が芽生えた。

何度も読み返してきて、読み終わるたびに何度も思い返すのは小学校の時の、あれは確か理科の授業。
平面に点を描いてそれをつなぎ合わせたとき、少ない点で安定感を求めるにはどうしたらいいかという内容だった。

先生が透明の板に点を置いて、紐で繋ぐ。
1点ではぐらつき、2点ではバランスを取りずらい。2点の間の紐を引っ張ると点は簡単にずれてしまう。透明な板は教卓に落ちてしまった。
3点目の時、一直線に並んだ3点ではぐらついていたけれど、3点を繋いで三角形にした時、今までの不安定がなかったかのようにしっかりと透明な板を支えた。
私にはそれが魔法のように感じられた。

そんな体験をこの『きらきらひかる』は思い出させてくれる。
私の記憶がもしかしたらどこかでいいように改竄されていたとしても、私にとってはそれが魔法で、魔法を体現したような笑子と睦月と紺の関係がすごく安心するのだ。

愛とはこういうことなんだと何度も思う。
人の感情は秋の空か海かのように流れ変わるようだけれど、私の愛の概念の根底には『きらきらひかる』がいる。

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