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クリエーティブ・ディレクターの「弟子」決定

昨年9月にこのnoteで開始したクリエーティブ・ディレクターの「弟子」募集プロジェクト。約4ヶ月の審査期間を経てようやく弟子が決定しました!まずは応募してくださったみなさんに感謝!そしてTwitterやnoteで拡散し支援してくださった仲間たちにも感謝!ありがとうございました。

図らずも、自分も1人のクリエイターとして、このプロジェクトを通じて学び、成長することができました。小さなプロジェクトの小さな物語ではありますが、決定に至るストーリーを公開したいと思います。

通過倍率306倍!?

「noteに募集文を書き、Twitterで告知」という至ってシンプルな方法で募集を開始。その時点では、最悪のケース、1通も応募が来ない可能性も想定していましたが、タイミングよく直後にGO主催のTHE CREATIVE ACADEMYに登壇し、告知させてもらったことなどもあり、最終的には全部で「306」通もの応募をいただきました。男女比はほぼ半々、年齢も16〜55歳と多様な方々からの応募になりました。最終1人の合格者は、実に306倍の狭き門となりました。

マグマのような熱い想い

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正直に告白すると、募集を開始し1週間で150通のメールが届いた時点でプロジェクトを始めたことをやや後悔しました。・・・と言うのも、応募メールには「なぜ弟子になりたいのか?」を書いてもらいましたが、したためられた想いのとてつもない熱量に圧倒されてしまったのです。「やばい!どうしよう!とんでもないことをはじめてしまった!?」その夜はなかなか寝付けませんでした。

募集文にも書いた通り、現状、広告のクリエーティブ・ディレクター(CD)の肩書きを得るのはかなり難易度が高いです(一部でCDの肩書きがばらまかれインフレ化している話はここでは除外します)。そこそこ以上の「エリートコース」のレールに乗った上で「努力」と「才能」をかけ合わせ、最後に結構な分量の「運」も必要になります。無理ゲーにも感じられるこの高難度な道のりを一足飛びにジャンプし、やりたい仕事に就けるかも知れないチャンスだと思えば、これに人生をかけて挑む人がいてもおかしくはありません。

事前にはまったく想定していませんでしたが、現役の電通や博報堂の社員や、内定者の方からも複数の応募がありました。

そんな渾身の想いをぶつけてくるのだから、こっちも生半可では受け止められません。実際、メールだけで判断するのは失礼だし、306人全員に会うべきだ!とは思ったけれど、それをやり始めたら何年かかっても終わらない。苦渋の選択で(それでもけっこう多めの)55人の特に熱い想いを持った方たちと、本気のぶつかり稽古を実施させてもらいました。

期待されるCDの役割

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昨年末も、電通時代の同僚からたくさんの「退職のお知らせ」が届きました。それでも一般的な企業に比べたら低い離職率だとは思うけれど、昨今、広告業界の見え方は、内からも外からも決して良くないのは間違いありません。

まず、そんな状況下に「CDになりたい!」という想いを抱えた人がこんなにも多くいたことに驚きました。また、その方たちの志望理由なのですが、自分のジョブロールをもっともざっくりと説明すれば「CMの企画制作業」になるので、CMを作れるようになりたい人が多いかと思ったのですが、意外にもCMを作りたい!というモチベーションの人はほとんどいませんでした。もちろん自分の作っているCMが、いわゆるお茶の間の賑わすタイプの作品ではないので、そういう志向の方たちとマッチしなかっただけかも知れません。

多くの応募者が「クリエイティブの力で世の中を動かす」ことや「クリエイティブでビジネスに貢献する」ことに興味を持っていました。

特に後者の「クリエイティブでビジネスに貢献する」に関しては、15年以上この仕事をやった後に、イギリスにMBA留学まで行って、関心と可能性を見出してようやくたどり着いた境地です。昔から「クリエイター」と呼ばれることがどこかおこがましい気がして、落ち着きが悪かった。「商業クリエイター」と自称することで自分なりに納得していたけれど、アーティストではない我々は自己表現のためではなくいったい何のためにアウトプットを作成しているんだろうか?そんなもやもやとした想いの発露こそが「商業クリエイター」なんだから商売に貢献するためにクリエイティビティを使い、アウトプットを出すべきだろうでした。

CMはそのアウトプットの中の手段の1つでしかなく、自分のやりたいことはクライアント企業の事業成長への貢献だと、ようやく気がついたのはごく最近のことです。視座の高さに驚きました。

ただ、裏返すとそれは「そんなに簡単」ではありません。経営者の方々が自分の話に耳を傾けてくださるのは、長年クリエイティブをやってきて積み上げてきた実績、経験、結果があるからです。いきなり「クリエイティブでビジネスに貢献できます!」と語る人間が目の前に現れても、経営者は聞く耳を持たないでしょう。

それでも、他では体験不可能な経験値が圧倒的に積めるはず。ロールモデルがいて、ゴールが見えているのであれば、いつかたどり着くことはできるはずと確信しています。

なんのための弟子なのか?

弟子をとることのリターンとして自分が何を期待するのか?は特に決めていませんでした。慈善事業的な側面も強くあって、自分の日々の仕事を取り巻く「知識」「経験」「見聞」を、未来のある若者に共有・体験させてあげることで、その人がそれをどう昇華させ、どう化けていくのを見てみたいなと思ったのが募集の最大の理由です。

そこに至ったのには1つの理由があります。世界中にファンがいて、東京ドームのコンサートを即日完売させるようなX Japanのギタリストであったhideさんが、当時、なぜ、自分のような一介の大学生をかわいがり、MVの撮影現場や全国ツアーを舞台裏から見せてくれたり、現場で働くプロの方々に次々と紹介してくださったのか?その真意は永遠に分からないけれど、自分も歳をとってなんだか少しだけ分かったような気がしてきたのです(hideさんとの話の詳細は下記リンク)。

少なくとも、今の自分を形成する最大の影響力は、hideさんとの出会いであることはまちがいありません。自分がhideさんにしてもらったのと同様に、機会を提供することがhideさんへの恩返しになるのでは?とも思ったのです。

ファイナルアンサー

面談をした55人の中でも、特に強い想いと光るものを感じた7人には、「なぜ自分があなたを弟子にすべきなのか?」というテーマでプレゼンをしてもらいました。それぞれに個性的な趣向が凝らされていて、すべてのプレゼンに感動。心を揺さぶられ、全員を合格にしたい!とすら思いました。

最終決断は悩みました。学生が良いのか、社会人が良いのか?1人に絞るのが良いのか、お試しで複数人が良いのか?そもそも弟子を取ることは正解なのか、不正解なのか?

数日、右往左往した後に長い散歩をしながら、弟子を採用することを決心し、合格者を1人に絞りました。これは自分にとっても大きな挑戦です。

応募者の中に1人、強い意志とほどばしるエネルギーを感じる人がいました。成功するか失敗するかは分からない。でも、この子に、普通では得られない特別な刺激を与えてみたら、どんな化学反応が起きるだろう?そのエネルギーは想像もつかない方向に転がるんじゃないか?そんな風に感じる人と出会うことができました。

ちなみに、不採用の連絡を入れさせていただいた複数の方から「自分は何が足りなかったのかを教えてほしい」と連絡いただきました。それらに返信はしませんでしたが、決してその人たちに何かが足りなかったと言う訳でありません。むしろ、逆に言えばある程度みなさん1人前として完成していて、一定の成功に繋げられることが想像できてしまう。逆に、最終選んだ人は、まだ何者でもなくもがいているからこそ、内に溜め込んだエネルギーを解き放った時の飛距離が想像がつかないと言う直感を抱きました。

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・・・とは言え、いきなりフルスロットルでは整理しきれないだろうから、まずは少しずつ肩慣らししてフェードインしていければと思っています。今後、ちょいちょいみなさまの前に登場してくるかとも思うので、まずはあたたかい目で応援よろしくお願いします。

また、最終的にフルの弟子として採用したのは1人ですが、少しちがう形で、既にプランナーやディレクターとして活躍している才能のある2人をパートタイムの弟子として採用することにしました。

彼らの仕事を自分が手伝ったり拡張させたり、自分の方にきた仕事を彼らに任せて(もちろんサポートしながら)みたりする中で、きっかけをつかみ才能を伸ばして行ってもらえればと思っています。こちらの2人は、まだ世の中にはそれほど知られていないながらも既に充分に即戦力なので、小さな案件でも何かお仕事あればご紹介、よろしくお願いします。

最後に、くり返しにはなりますが、応募くださったすべてのみなさま、本当にありがとうございました。

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