工藤吉生歌集『世界で一番すばらしい俺』発売中です
こんにちは。歌人の工藤吉生です。
初めての歌集『世界で一番すばらしい俺』を短歌研究社から出版しました。
穂村弘さんと加藤治郎さんに帯文をいただきました。
「おかしないい方になるが、高度な無力感が表現されている。」──穂村弘
「人間性が色濃く表れた作品です。黒ずみにちょっとかけてみましょうよ。」──加藤治郎
2018年の短歌研究新人賞の選考会で穂村さんと加藤さんから一位の評価をいただき、工藤吉生「この人を追う」30首が受賞いたしました。受賞作品がこの本に収録されています。
また、穂村弘さんは雑誌『Precious』で歌集『世界で一番すばらしい俺』を紹介してくださっています。以下で読めます。
「異様なメンタル」なのだそうですよ。
興味のある方はAmazonものぞいてみてください。
ここからは歌集『世界で一番すばらしい俺』から15首の抜粋をお届けいたします。
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目を閉じて頭を下にして落ちた六十九キログラムの自分
傘を振り落ちないしずくと落ちるしずくどこが違っているのでしょうか
何をしても落ちなさそうな黒ずみに両足で立ち〈1〉と〈閉〉押す
おそろしい形相をした歳月がうしろからくる 前からも来た
十七の春に自分の一生に嫌気がさして二十年経つ
ぼくは汽車、汽車なんだぞー! と駆けてきた子供がオレにぶつかって泣く
この当時オレが笑っていたなんて信じ難いが夏の一枚
秋がくる 床屋の椅子に重大な秘密があって欲しいと思う
三人で歩いていれば前をゆく二人とうしろをゆくオレとなる
この人にひったくられればこの人を追うわけだよな 生活かけて
公園の禁止事項の九つにすべて納得して歩き出す
東京に行って頑張りたいなどと聞こえるベンチにまどろんでゆく
オレ以外みんな真面目に生きていて取り残された気のする深夜
眠るため消した電気だ。悲しみを思い返して泣くためじゃない
膝蹴りを暗い野原で受けている世界で一番すばらしい俺
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以上、抜粋でした。
歌集には331首が収録されています。
これを機会に歌集を手に取っていただければ幸いです。
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※紙の書籍です。 税込1650円。
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短歌研究社
著者について
工藤吉生(くどう よしお)
1979年千葉県生まれ。宮城県黒川高等学校卒業。
2011年 枡野浩一編『ドラえもん短歌』(小学館)で短歌に興味を持ち、インターネットを中心に短歌を発表し始める。
短歌結社「塔」を経て、2015年より「未来」所属。
2017年「うしろまえ」(20 首)未来賞受賞。
2018年「校舎・飛び降り」(50 首)第8回中城ふみ子賞次席。
5月17日、車にはねられる。この日に投函した「この人を追う」(30 首)が第61回短歌研究新人賞受賞。
宮城県在住。愛猫の名はアリス。
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