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キャリアとしてのブルーオーシャン戦略

個人のキャリア戦略と企業の経営戦略は、類似して考える部分がいくつかあります。例えばマーケーティング戦略のポジショニング、フィナンシャル戦略としての現在価値・将来価値といった事は、企業経営だけでなく、個人のキャリアにおいても大事な考え方になります。その中で、ブルーオーシャン戦略という約20年前に世へ出てきた戦略思考について、個人のキャリアへ具体的に落とし込んでみたいと思います。


ブルーオーシャンとは?

どの業界にも「赤い海(レッドオーシャン)」と「青い海(ブルーオーシャン)」という2種類の市場があります。レッドオーシャンは既知の市場空間、ブルーオーシャンはまだ生まれていない、未知の市場空間です。レッドオーシャンは競争のルールも良く知られており、競争相手が増えるにつれて利益や成長の見通しは厳しく、製品のコモディティ化も進みますよね。一方で、ブルーオーシャンは市場として未開拓であり、企業も新たに需要を作り、利益の伸びも期待出来ます。既存産業の枠を超えて新しい需要を創造される場合もありますが、多くは既存の産業を拡張する事で生み出されきました。
現代社会はグローバリゼーションが進み、多彩な製品やサービスをいつどこにでも供給出来る様になりましたが、世界的に見ても需要規模が増えてない状況です。その状況下では、ブランドの差別化が困難な為、ブルーオーシャンの創造が必要になります。

バリューイノベーションという戦略ロジック

ブルーオーシャンを創造するに当たり、バリューイノベーションというロジックが肝になります。バリュー(価値)×イノベーション(革新)の掛け算となり、競争の無い未知の市場を創るには、価値だけを高めるだけでも難しく、技術イノベーションだけ先行しても買い手には受け入れられない為、両方の調和が必要という考え方です。私なりの解釈としては、どんな市場でも技術イノベーションは一定の周期で生まれて来るものだと思うのですが、それを市場や買い手にいかに響かせるか、というのは別の観点が大切で、そこには企業という存在に対する理念だったりビジョンみたいなものになるかと考えました。
バリューイノベーションの事例の一つとして、エンターテイメント集団であるシルク・ドゥ・ソレイユがあります。シルク・ドゥ・ソレイユがレッドオーシャンを抜け出し、ブルーオーシャンを手に入れる為、既存のサーカス団としてのやり方を止めて、新しいエンターテイメントを創る事に成功しました。例えば、一般的なサーカス団がやっていた動物ショーやお金の掛かるサーカス界のスター呼ぶ事を止めて、ブロードミュージカルに倣って演出や照明を工夫し、ストーリー性やテーマを与えました。その様な従来には無かった芸術性を追求し、課題を新たに設定した事になります。またここで重要なのは、従来のコストを切り落としたうえで、新たな取り組みを導入し、差別化とコストの低減の両方を実現出来た事です(レッドオーシャンの世界では、ふつうトレードオフの関係になります)。

キャリアへバリューイノベーションを活用

シルク・ドゥ・ソレイユが成し遂げたバリューイノベーションによるブルーオーシャン市場の創造は秀逸であり、ある意味、どんな企業や個人でも参考になるケーススタディーだと思いました。それは、シルク・ドゥ・ソレイユがハイテク産業に属している訳では無く、元々はサーカスという伝統的な商品を扱う集団がブルーオーシャンを成し遂げたという点からです。
では個人のキャリアでは、何を止めて、何を始めれば(増やせば)良いのでしょうか?もし自分がサラリーマンで、差別化を図るという観点では、面白い事が出来そうな会社に転職する(=今の会社を辞める)、今後伸びそうで自分が得意な分野で複業を始めてみる(=今している仕事への時間リソースを減らす)などが考えれます。今所属している組織を辞めるという選択もありますが、やはり相応のリスクがあるので、そこに至るまでの準備期間が必要だと私自身は考えます。シルク・ドゥ・ソレイユの事例では、価値とコスト(=お金)の関係を出していましたが、個人のキャリアにおいては価値とコスト(=時間)の関係から捉えて、バリューイノベーションを推し進めてブルーオーシャンを創る事になります。また、個人のキャリアにおいて価値とイノベーションの掛け算を見た場合、イノベーションを起こす事は難しく感じますが、シルク・ドゥ・ソレイユがやった様に他者(ブロードミュージカル)を真似て、それを市場のニーズに合わせて自分なりにアレンジ出来れば、それがイノベーション(=新結合)になります。


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