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眠れない夜に

受験勉強がはかどり過ぎてしまった。

そろそろ寝ないと明日の早朝補習に響いてしまう。

こんな時は、おじいちゃんに教わった言葉を思い出す。


眠りたい時は過去を思い出し

眠りたくない時は未来を考えなさい


そんなの利く訳ないと思っていたが、意外と自分には合ってるみたいで時々利用している。猫のミミと一緒に寝て、ゴロゴロと喉が鳴る音を聞きながら過去を思い出すと、ほぼ間違いなく気付けば朝になっている。


今日は何の思い出にしようかと考えるが、結局いつもの修学旅行にしてしまう。あの楽しかったハワイでの1週間を振り返るのがとても楽しい。

空港についた瞬間からのフルーツジュースみたいな香り。

周囲に圧倒されながら友人達と歩いた海岸。ダイヤモンドヘッドと海岸線のコントラストが素晴らしく、同じ地球とは思えなかった。

写真を撮りまくってたら、撮りましょうかと寄ってくる外国人。慣れないチップ制度にビクビクしながら断った。

商店街を歩きながら、日本では考えられない大きさのアイスクリームとジュースを買い、友人と分けながら食べた。これがMサイズか?とツボにはまり笑った。

日本に帰ったら絶対着れないようなアロハシャツも買った。案の定今ではタンスの奥にしまっている。

カタコトの英語より、身振り手振りのほうが伝わることも知った。

夜はショーを見に行った。

内容はよく分からなくてつまらなかったが、隣にはクラスで一番人気の彼女がいたので、それだけで楽しかった。

修学旅行前日に告白をして、奇跡的にOKをもらえた。

まだ友人達も知らない。自由時間にこっそりデートしようと約束している。

今なら何でも出来る気がする。

成長したのか、ハワイの力か。

ショーを見てると、ステージ奥で黒い煙が上っていた。

演出の一つかと思い見ていたら、どうやら様子がおかしい。

観客が出口へと非難している。

僕は慌てて彼女の手を掴み、一緒に走った。

大勢の観客に揉まれて、彼女とはぐれてしまった。

皆が逃げる方向と逆方向に走り彼女を探した。

ようやく見つけた彼女は足を怪我をしていて、知らない外国人におんぶされていた。

僕はその外国人に詰め寄り、

「ノーチップ!ノーチップ!」

と叫んで彼女をおんぶした。

ニャー、ニャー

遠くでミミの声がした。

ちょっと待ってて。彼女を助けたら行くから。

・・・ハワイに連れてきたっけ?

・・・・


ジリリリリリリリ

目が覚めると、ミミが僕の顔にすり寄ってきた。思わず

「あ・・ごめん」

と言った。

僕がミミを見捨てる訳ないじゃないか。彼女なんていないんだし。




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