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拝啓モラトリアムズ

拝啓モラトリアムズ

お元気ですか。

クモイで過ごした4ヶ月間、あんな日々はもう人生の中でないんじゃないかと、いつまで経ってもそんなことを考えています。

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こんなに重く考えてるのは私だけかも、みんなにとっては「いい経験だった〜楽しかった!」くらいなのかも。でもライフチェンジングな出会いや経験ばかりだったし、たくさんあの場所から影響を受けたので。笑

長いけど読んでくれたら嬉しいです。

今年の夏のインターンは、全国から集まった11人。上は24歳から下は18歳まで。育った環境も、置かれてる状況も、将来やりたいことも全く違う人たちが集まって、毎日一緒に起きて、働いて、食べて、温泉に入って、寝る。

私たちの朝は6時半開始だったね。朝食配膳のために起きる誰かのアラームが1日の始まり。

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目覚ましをかけた本人は全然起きないのに、私はそれで目が覚めてしまう。「うるさい...起きて...」と寝ぼけた声で話しかける。最終的に飛び起きて、猛ダッシュで出勤。

清掃は体力勝負。終わった後は動けないくらいヘトヘトになる日もあった。まあでもあんなにうだうだ言ってたくせにって感じだけど、今考えるとそんな嫌いじゃなかったかも。綺麗になった部屋の電気を最後に消す時。正しい場所に置かれた備品、正しい畳の匂い、正しい場所にいるあの感じ。もこもこの泡に覆われた温泉の床を、ホースで一気に流していく清々しさ。廊下の隅から隅までかけた掃除機は、塵ひとつなくなった紺色の絨毯を眺めて達成感に嬉しくなったりした。

夜のチェックインに夕食。クモイのお客様は長旅で疲れてるはずなのに、それさえも楽しんでいる素敵な方達だった。ご家族でいらっしゃったお客様の、小さい子供たちと仲良くなって、次の日めっちゃ朝早くから一緒に遊んでた人もいたね。個人的には、イギリスで住んでた街からきたご夫婦に遭遇して、帰ったらうちにもいらっしゃいな、と言っていただいたことがあった。そういう出会いが、数え切れないくらいある場所だった。

仕事は本当に好きで楽しかった。けどそれだけじゃなくて、クモイでは朝から晩までずっと刺激をうけることばかりだった。

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上川町の地方創生に携わって、役場で町おこし企画のプレゼンをさせていただいたとき。

うまくいかないブレスト、何回も崩れるアイデアの壁打ち、チーム内でさえ合わない意見、やりたいことと現実の妥協点。

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前日の夜遅くまで資料作って、でも結局納得いかなくて。役場に向かう車の中で最終確認をしてた。

色々学んだよね。これから社会で使えるような、スキルと呼ばれるものには程遠いのかもしれない。でもその第一段階になったんじゃないかとは思ってる。みんながどうかは知らんけど。

でもさ、難しいこと抜きにして、ただ話してるだけでも楽しかったよ。

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「あ、初めまして〜!名前は?どこから来たの?そうなんだ。あ、ここ部屋ね。布団私の隣使って〜。そろそろお風呂入るけど、一緒に行く?」から始まって。だって、そんな出会い、他にある?普通なら絶対に交わらなかったであろう人たちと、人生のある一点だけを深く濃く共有してる感覚。

ホテルがやりたかった人、地方創生に興味があった人、なんとなく来た人、学生生活何もせず終えていくのが怖かった人。みんな全然違うのに、みんなどこかで似てる人が集まったなってちょっと思ってた。「類は友を呼ぶだね」って料理長に言われて嬉しくなった。同じ言語で話せている感覚がずっと心地よかった。

あとは、誰かと一緒にゆっくり食べる朝ごはんが好きだった。

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何も話さなくてもいい、でもそこにいていい。そのままの自分を受け入れてくれるだろうという信頼。すっぴんも、仕事での失敗も、退勤後の大盛りご飯完食も、寝言も。それらとは比べ物にならないくらい本当は人に隠していたい、自分の嫌な部分も。生活を通すとどうしても見えてきてしまう。そういうことを全部見られてて、もう隠すことがなにもなかったから。

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層雲峡には何にもないけど、時間だけはあった。モラトリアムだね、って言って笑った。ものに溢れた場所で生きてた私たちには、逆にそれくらいがちょうどよかったのかも。

インターンだけじゃない、クモイの社員さんはめちゃめちゃに素敵で、どうしてこの会社で働いているのかっていう問いに対して明確な答えを持ってて、どういうことをしたいかを持ってて。

そんな風に働きたいなってずっと思ってる。他のインターンのみんなも多分、背中を見て、個々で色々考えてたんだろうなって思う、将来のこと。

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クモイのインターンはこれからめっちゃ倍率高くなって、学生間で「え、私?2019年夏。」みたいなマウントが発生したらいいと思ってる。

そうなったら面白いな。なりそうにない気もするな。山奥だし。

色んな人にあの場所を知ってもらいたい、でも同時に誰にも教えたくない。
(もちろんお客様には、たくさんきて欲しい)

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今は、クモイを去ったみんながそれぞれの場所で頑張ってて、まあ別に頑張ってなくてもいいけど、とりあえず楽しく毎日過ごしてて、しんどいこともあるけど、まあ大丈夫、たまにあのモラトリアムな日々を思い出して、懐かしんだりしてほしいなって思ってます。

また集まれたらいいね。

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まほより

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