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あじゃいるにOJTをやってみたおはなし

メロスには、アジャイルがわからぬ。

メロスは、ウォーターフォール村の住人である。設計書を基にソースを書き、手戻りと遊んで暮らしてきた。

けれども、課員の顔色については人一倍に敏感であった。

課長「新人のプログラミング教育やっといて」

2017年4月あたりから、何故か新人のプログラミング教育がメロスの仕事になった。

どうやら、メロス以上にプログラミングができる社員がいないのが理由のようだ。

うち開発課なんですけど。

15年近く稼働しているシステムの保守運用をしているうちに、プログラムは肥大化し、もはやモンスターであった。

プログラミングができる要員の確保と人材育成。それが弊課ひいては弊社の課題なのである。

かくして、数年は新人の外部研修後のアフターフォローをしたり、ソースコードをレビューしたり、色々やってみたものの、何故か新人はプログラミングを覚えられない。

「読めれば書けるだろう、書ければ読めるだろう。」

メロスの場合、この尊大な虚栄心が猛獣だった。虎だったのだ。

課長「新人教育の進捗どうですか?」

2020年11月、豪を煮やした課長がついに動いた。今年の新人は3名。

2020年度のOJTはチームリーダーと新人の二人三脚制度だった。チーム外にいるメロスは進捗など知る由もない。

そもそもの新人育成の目標なんてものも、とうの昔に忘れてしまった。

ああ、何もかもばかばかしい。やんぬるかな…。

参加した。

ほう、と長いため息がでて、夢から覚めたような気がした。

はじめてのふりかえり

行ける。歩こう。

クリスマスの会議室。新人3人とホワイトボード、ふせん。

YWTの説明をし、4月から12月で新人の受けた研修、担当した案件の資料を3人分それぞれ用意した。

YもWもたくさんでた。もっと案件をこなしたい、理不尽な残業に耐えられない…。たくさん困って、成長していた。セリヌンティウス、メロスを殴れ。

とりあえず結果をメモ帳にまとめて課長へ提出した。

課長「こういうのが欲しかったんだよ」

どうやら課長は、「新人たちが何に困っているのか」が知りたかったらしい。

課長から見えるのは案件の消化率と週報だけだった。できたことは書いてあっても、できなかったこと、やりたいことは見えてこない。

チームリーダーと新人の二人三脚であるが故に、OJTの進捗が見えていなかったのはメロスだけではなかったのである。

にかいめのふりかえり

前回のふりかえりでは、3人まとめていたため、個々人のYWTがみえなかった。

1度やったのだからもう大丈夫だろうと、個々人でのワークとしてみた。

1月から2月。短い間ではあるが、YもWもTも、しっかり出てきていた。むしろ、前回の困りごとの消化が追いついていない。メロス、セリヌンティウスを殴れ。

「完璧にできた?」

これを聞くと、新人は困っていること、もっとうまくできそうだったことを話してくれた。

もう一つの問いとして、「来年はリーダーできそう?」も効果的であった。リーダーとの二人三脚であったがゆえに、自分とリーダーの差を考えることができたのだろう。

新人の思いを報告書にしたため、そっと上長へ回覧した。

部長「素晴らしい取り組み。」

「今後も継続して欲しい。」報告書に部長のメモが貼ってあった。

2021年4月、今年いっぱいでOJTの講師役を後輩へ引き継ぐ。今年は無理しない程度に毎日軽くふりかえりをしつつ、大きくは四半期毎にやっていこうかと思っている。

後輩がこの取り組みを継続するかは分からない。優秀な後輩のことだから、もっと良くしてくれるだろう。

外には、ただ、黒洞々たる夜があるばかりである。

メロスの行方は、誰も知らない。

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