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気負わない離乳食のすすめ

私が長男の離乳食で試行錯誤していたのは、
もう13年前。
おそらく今も変わらず、世のお母さん方(今時はここにお父さんも併記すべきなのかもしれないが、配慮でがんじがらめになると進まないので省略)は、ああしましょうこうしましょうと、要求だらけの「離乳食の進め方」に苦しめられていることだろう。

育児本や、SNSなどで紹介されている離乳食レシピは、どんなに「簡単」「頑張らない」と銘打っていても、いくつかの手順があったり、仕切りのあるお皿に数種類盛り付けてあったりと、私はそれを見るだけで、げんなりしていた。これを目指すのかと。

それまで、自分の体が勝手に生成してくれるおっぱい、もしくはお湯を注げばできるミルクを与えていればよかった子どもの食事が、茹でたり裏ごししたり、栄養の偏りに気をつけ、新しい味に出会う経験を積ませたりと、一気に数段階も高度な技術を要求される。

しかも子どもはこちらの頑張りなど意にも介さず、食べることを拒否してくる。

ただでさえ子どもから目が離せない、子どもが離れてくれないという状況で、自分たちのご飯を作るだけでも精一杯なのに、食べてくれないかもしれない赤ちゃん専用料理を手をかけてちまちま作るなんて、常人には無理というものだ。

それでも、子育てに向かい合う母親は、推奨される母としての任務をなんとか遂行しようとする。それをこなさないと、子どもがちゃんと育たないのではないかとの不安に苛まれるのだ。周りのお母さんはちゃんとやってるのに、と自分を責めてしまいがちなのだ。

当時の私に教えてやりたい。

あなたの目にするお手本は、ハレの離乳食だ。
多くの人の日常ではない。

育児本も商品だ。美味しそうな写真を載せるし、レシピは多種多様だ。
SNSで目にする素敵な母親は、見てもらうために頑張っている。目的が違うのだ。参考になんてしなくていい。
そして、「手抜きです」なんて言葉もSNSにおける基準であり、載せられる時点で手抜きではない。現実世界でのお母さんの手抜きは、とても他人様に見せられたもんじゃない。

そして、食べない子どもは本当に食べない。
手間をかけても、美味しくできても、関係ない。
彼らは、「我が何を食べるかは我が決める」と、
話せなくとも、全身で主張するのだ。
それが健全なのだ。

しかし右も左もわからない新米母だった私は、そんなところまで頭は回らず、本の示す、理想的な離乳食を食べさせるべく、頑張っていた。
その時の離乳食の記録が残っている。

1日目:10倍粥→小さじ1くらいは食べたと思う。あげればもっと食べただろう。

最初の10倍粥はあっさり食べた。少しずつ増やし、順調順調、と余裕をかましていたのだが…。

13日目:10倍粥小さじ4、人参すり潰し→オエーっと出した。
16日目:10倍粥小さじ4、レタスの裏ごし→人参ほどではないけどやっぱりおかゆがいいみたい。
21日目:10倍粥大さじ2弱、かぼちゃすり潰し→オエーっとするのでご飯に混ぜて。
23日目:10倍粥大さじ2、バナナすり潰し→バナナもオエー。

やはり10倍粥は食べるが、野菜は受け付けない。
ここで私は電話相談をしている。
「味や舌触りの好みがあるので、焦らず今のペースで」とアドバイスもらって一旦安心する。しかし、

25日目:10倍粥?、大根裏ごし→イスが嫌なのかな。

焦りは消えず、イスのせいにしてみたり。

26日目:10倍粥大さじ2、トマト裏ごし→3口
30日目:10倍粥?、じゃがいもすり潰し+ミルク→嫌がって食べず。


好きなミルクと混ぜてみるも撃沈。

34日目:10倍粥大さじ3、ほうれん草裏ごし→ほうれん草、そんなに嫌がらず。
37日目:10倍粥大さじ3、豆腐すり潰し→3口ほど


ほうれん草はなんとか食べるが、もう始めてから一ヶ月が経つ。
うちの子、粥しかまともに食べない。

離乳食の進め方によれば、舌でつぶせる固さのものに移行し、2回食が始まる頃だ。
なのに、離乳初期状態からなかなか進まなくて焦る。

この頃、私は先輩ママである友人に相談した。
「かぼちゃは甘いから、結構食べるよー」
とのアドバイスされる。
(かぼちゃ、前ダメだったけど…)とは思ったが、再挑戦したら案外食べるかもしれない、と早速試した。

40日目:10倍粥の裏ごしなし、ほうれん草、かぼちゃ→やっぱりカボチャが嫌いみたい。

…やっぱりかぼちゃはダメだった。

46日目:10倍粥、キャベツ→8割くらい食べた。
47日目:10倍粥、キャベツ、しらすすり潰し→しらす嫌がらないが、全体にあまり食べず。6割くらい。

ここからようやく2回食にトライ。

48日目朝食:バナナ→嫌いみたいで、オエっとして髪をかきむしる。

どんだけ嫌なんだ。

この後、50日を過ぎた頃、
きな粉をお粥にかけると野菜も一緒に食べることがわかる。

53日目:10倍粥大さじ4+キャベツ+きな粉→完食した。
55日目:10倍粥大さじ4+ほうれん草+きな粉→完食。


63日目:10倍粥大さじ4+ほうれん草+しらす+きな粉→3割ほどしか。
64日目朝食:10倍粥?さじ+きな粉→半分残す。

順調に完食する日が数日続いていたのに、飽きがきたのか…。
また頭を悩ませ始める。
味がないのが原因かと、頑張ってだしを取り、お粥に入れてみるが、

65日目:だしのお粥→半分残す。
66日目:鯛のだし煮、モロヘイヤ、だしのお粥→ほとんど残す。


鯛をあげてみるも、反応はあいかわらず。

その後も、きな粉粥ならなんとか完食する日が散見するものの、さつまいもや人参をだしで煮てみても、ささみに挑戦したり、ベビー用の洋風だしやホワイトソースを加えてみても、素麺を試してみても、なかなかヒットしない。

こうなったら、ベビーフードに助けてもらうしかない!と食べさせてみたが、それすら2、3口。ベビーフードは美味しいから食べるよーって、また別の友人は言っていたのに…。

離乳食を始めて三ヶ月以上。もう時期的には離乳後期にさしかかっているはず。
3回食にする頃なのに、2回がやっと。主食はきな粉粥とミルク。
同じ頃に生まれた子達は、好き嫌いはあれど、離乳食を進めていっている。
なのにわが子はどんな食材も好むことなく、100日が過ぎていた。

そして、万策尽きた106日目。
ついにその日はやってきた。

その日、もう冷蔵庫には新たに試す食材は無かった。あるのは納豆のパックのみ。

納豆か…。そういえば離乳食のレシピ本に納豆もあったな。
こんな離乳食嫌いの息子が食べるとは到底思えないけど。

いつもは少なからず期待しながら準備するのだが、もう少しも期待はしていなかった…のだが、

106日目:納豆大さじ1、お粥→完食 パクパク

納豆をおかゆに混ぜたら食べた!
パクパク食べた!

離乳食記録で初めて「パクパク」と書かれている。
今でもその日の嬉しさは覚えている。
その翌日、納豆なら食べるのか、食べたのは気まぐれで、やはり納豆もダメなのか。

ドキドキしながら迎えた107日目。

107日目:納豆、ほうれん草、お粥→お粥いつもの倍 パクパク完食

ようやく息子にも好きな食材が見つかった!!

その後は波はありながらも、バナナやトーストも食べるようになり、一週間後にはめでたく3回食に進めた。
息子の中で納豆が起爆剤になったのか、納豆、きな粉、しらすのどれかを混ぜれば、ブロッコリーや人参など他の野菜もパクパク食べられるようになった。

それからの息子の食事はほぼ毎日、

朝:トーストとバナナとヨーグルト
昼:きなこ野菜混ぜご飯
夜:納豆野菜混ぜご飯

これが本当に楽だった。
野菜や魚を数種類まとめて茹でて冷凍しておく。
それを毎食、ローテーションしながら必要な分だけ解凍して、納豆かきな粉をトッピングしたご飯と混ぜるだけ。

味つけもいらず、盛り付けも気にせず、あっという間に用意できた。
食事というより、エサのようだなと気が引ける気持ちも若干あったが、とにかくそれならパクパク食べるし、栄養だって十分だ(と思う)。
元気だし、病気もしないし、体重も増えるし、何も問題なかった。

このやり方は次男の離乳食の時にも迷わず採用した。長男よりも比較的育てやすかったので、離乳食の時もあまり苦労しなかったのだが、「離乳食は混ぜご飯あげておけばいい」と思うことでとても気が楽だった。

この混ぜご飯は褒められたものじゃないかもしれない。
でも、こんなご飯で育った長男は、好き嫌いのない、食べることの大好きな子に育った。家族のなかでも、一番味にうるさくて、ちょっとした味の違いに一番に気が付く。
(ちなみに、同じような離乳食で育った次男は、次第に偏食になっていき、好き嫌いも激しい。いろいろと、関係ないのだなと思う)

私の離乳食奮闘記の着地点は、この混ぜご飯だ。
毎日見た目も同じだし、味わいもさほど変わらないだろう。
でも、こんなのでいいんだと思えたら、毎日の食事の時間が気楽になる。
ただでさえ育児中は疲労困憊なのだ。
気楽に、本当に手を抜きつつ、少しでも育児を楽しんでほしいなと思う。

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