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フェアプレー

バリュー

クルのバリューに「フェアに関わる」とあるが、
私自身普段から「フェア」という言葉を使うことが多く、企画やデザインのお仕事をいただく時やパートナーや下請けの方々へ発注する上で、とても大切にしている感覚である。

元々私は不動産デベロッパーにいたが、デベロッパーというのは建物を建てて、それを売ったり貸したりする事業なので、必然的に発注者であることが多い。例えば、ゼネコン、設計事務所、広告代理店などが受注者となる。

発注者側はお金を払っている方なので、リスクを取っているし、権限が大きいのは当たり前かもしれないが、その権限を過大に利用しているのを見る機会もあり、若手時代の私は違和感を感じていた。

見積もりは叩いてなんぼ。
支払時期もできるだけ遅く。
接待はされるもの。

もちろんそんな人ばかりではないが、発注者の立場が上という空気感はあったように思う。

フェアな関係でなければ一緒にしない

最近まで長い間かなりの労力をかけて進めていたプロジェクトがあった。
竣工してお引き渡しもし、無事オープンしたが、現場で色々不備が出てきた。それはよくあることなのだが、その場合事業主と我々と工事会社で協力しながら色々工夫して手直ししていくことが多い。
しかし、一方的に責任を追及され、本来支払われるべきお金もストップされた。

自分たちが損をしなければ、取引先が困ってもいいというスタンス。
こういう会社とはどんなに大きなプロジェクトでも二度と仕事しないと誓った。(そもそもそういう会社は長い目で見れば存続しないと思うが)

私は発注者(デベロッパー)も受注者(設計事務所)も経験しているので、特に思うが、発注者はお金を払う代わりに我々はデザインやアイデア、労力を提供している。これはある意味、等価交換であり、本質的にはどちらが偉いとかはないと思っている。

これだけいうと安い金額では受けないと見えてしまうかもしれないが、重要なのはフェアな関係であり、その関係性を築けるのであればできる限り工夫して受けたいと思っているし、そうしている。

また、冒頭にもあるように我々は受注者でありつつも
我々からお願いする構造設計事務所や設備設計事務所、パース制作なども沢山あるので、発注者でもある。そしてもっと広義で言えばメンバーやパートナーだってそうだ。

発注者目線だとしても同じで、自分だけが良ければ良いというスタンスの会社やメンバーはフェアな関係が築けないので、一緒に仕事しない。

バランスを崩せば長くは続かない

視点は変わるが、
そもそも決算報告書の項目とそれは誰のどんなお金かというと

売上    → お客様からいただくお金
原価    → 外注先に払うお金
一般管理費 → 従業員や事務所運営に払うお金
法人税   → 国に払うお金
純利益   → 最後に会社に残るお金

当たり前の話だが、
外注への支払いを落とせば、利益は増える。
給与を落とせば、利益は増える。
利益が少ないと税金も減る。

しかしこれらは適正なバランスがあり、バランスが悪いと長く続かない。
例えば、
先方にたくさんの予算があるからと、提供価値以上に受注金額(売上)を上げれば、おそらく次の仕事は来ない。
外注先への発注(原価)を必要以上に叩き続ければ、本当に助けて欲しい時に受けてくれなくなる。
従業員の給与(一般管理費)を低いままで雇用し続けたら、成長すればするほど転職する可能性が高まる。
税金を払うのが嫌で不必要な経費を使い、利益を抑えたら純資産が増えず、銀行の評価が高まらず、成長するための借り入れができなくなる。

自社だけが得をするように(バランスを悪く)すると結果的に長期的な存続や成長に繋がらないのだ。


フェアプレーが熱狂を生み出す

フェアプレーとは「公明正大な行為・態度。」

(広辞苑第六版より)

クルも父から私が継いだ会社ではあるが、継ぐ時からファミリーカンパニーでなくパブリックカンパニーにすると宣言しており、社内において、できるだけわかりやすいように会社の経営状況(売上や利益、資産)を見える化している。

パブリックカンパニーである以上当たり前の話だが、私的な経費を会社では使わず、全員で儲けた売上、取引先にお支払いしたお金、全員で給与や会社の経費として使ったお金、残った利益を公開。

小さい会社が多い設計事務所でこんなことをしていると言うと驚かれることも多いが、うちは設計事務所の新しいロールモデルになろうと思っているので、上場企業など永続的に持続・発展している企業がやっていると考えれば、なんら特別なことではない。

一方で、うちのメンバーの大半はデザイナーなので、こんな経営の情報を言われても馴染みがなく、100%理解できることはないのだが、公明正大にやっているというスタンスを示すこと、そして将来独立するメンバーもいるので、少しでも勉強になればと思ってやっている。

原理原則だが、結局人は、相手が自分のことだけしか考えていないと見えたら、協力したくなくなるし、それこそ対価とかメリットのみに着目して比較することになる。そしてそれは会社だけでなく、人間関係においてもそんなものである。

決算情報を公開することだけではないが、フェアプレーを意識することでよりいいメンバーやパートナー、協力企業が集まり、それがうねりとなり、チーム全体の熱狂を生み出していく感覚は今とても感じている。
つまり、フェアプレーはチーム全体の熱狂を生み出すために最も本質的で効果的な行為で、もっというと、プロジェクトの成功への最適ルートなのだ。

(至極当たり前のことしか言っていないかもしれないが、
これを言うことによってよりフェアな行動を気をつけなければと
ちょっと緊張したりもしている。)

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