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モノローグ台本『ボトルシップ』

はじめに

こちらの作品は男性のみです。

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本文

 巨大なボトルの中に二人の男が閉じ込められている。

 男A、一緒に閉じ込められた男Bと話している。

男A「ボトルシップ…?あぁ。えっと、なんでしたっけ?いえ聞いたことはあるんですよ。聞いたことはあるんですけど…あぁ、はいはいはい!船の!確か、あれですよね。昔、流行りましたよね。いえ、私が子供の時にはもう流行っていなかったです。私が子供の頃に『昔、流行った』って聞きました。ですから、過去完了形っていうか、大過去みたいな」

男A「そうなんですよ!英語の教師をしておりまして。女子校の!あなたは?……警備員!あ、自宅の方の。あー、自宅の…そうですかぁ…」

男A「ボトルシップって、どうやって中に入れているんですかね?だって、瓶の口より大きいじゃないですか。…え?いや、普通知りませんよ。『そんなの常識』って言われても。あの。一応、あなたより長く生きてる人生の先輩として、老婆心ながら言わせていただきますけど。『常識とは十八歳までに身につけた偏見のコレクションのことである』というニュートンの言葉が…アインシュタイン。あ、そうなんですかぁ。アインシュタイン、アインシュタイン。へぇー、博識ですねぇ。……『そんなの常識』?……いや、この言葉を知っておきながらのそれは、構造的におかしいでしょ!」

男A「あ、申し訳ありません。私としたことが。いや、普段はそんなことないんですよ、どうしたんでしょうねぇ」

男A「え?ボトルシップの作り方?……ほぅほぅ。あー!バラバラにしたパーツを、ピンセットを使って、中で一つずつ組み立ててる。そうなんですか、それは大変だ」

男A「……お好きなんですか?あぁ、そうなんですか!ボトルの方が?あ、シップの方が!そりゃそうだ。あ、自分の部屋に飾っていあると、それは良い!ほぉ、二つ船が入ってるタイプもある。はぁ〜!奥深いものですねぇ。まぁ、道というのはすべからくそういうものなんでしょうけど」

男A「でも、二つも同時に作っていたら『あれ?これはどっちのパーツだったっけ?』とかなっちゃいそうですよね。…あ、またそうやって人を見下す。あんたねぇ。確かに雑学の知識はあるかもしれないけど、態度が悪いよ!」

 男Aと男Bの人格が入れ替わり始める。

男A「ったく。まぁとにかく。ここはまるでボトルシップみたいだって話ですよ。『あ、そうなんですかぁ』って、ちょっと考えりゃわかるでしょ?理解が遅い」

 男A、上を見る

男A「だって、ほら!あんな狭いんだよ?肩幅的に絶対無理だって!絶対通らないじゃん!…いや、(体を半身にして)こうしても無理でしょ!…だからこれって、分子レベルで一度バラバラにされて、みたいなことだと思うんだよ!

男A「いや宇宙人でしょ、それしかないでしょ!このガラス張りの感じとか、この服とか、絶対宇宙人でしょ!いや、あり得るからね!俺、ネットで見て、そういうのすげえ詳しいから!…いやいや違うから!全然違うから!それは、政府が隠しているだけだから!これ、常識だから!うん、ニュートンじゃなくてアインシュタインね!」

男A「…え?混じってるってなにが?『どっちが私ですか?』どういうこと?……俺?俺は…私ですよ」

(完)


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