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べん毛⑤ 真核生物の鞭毛

真核生物は鞭毛を波打ち運動(beating)させて水中を泳ぎます.細菌やアーキアのべん毛の回転運動が3次元的な運動であるのとは異なり,真核生物の鞭毛は2次元的な運動を行います.


鞭毛繊維は,リング状に配置された9本の二連微小管(図中の薄い灰色)とリングの中心に配置されたペアな2本の微小管(図中の中心の濃い灰色)が細胞から伸びており,繊維の外側は膜で覆われています.


鞭毛繊維は,その特徴な微小管の構造的から「9+2構造」と呼ばれます.
これらの微小管繊維は他のタンパク質(図中の黄色,緑色,橙色,青色)によって安定化されています.

(真核生物の鞭毛, https://doi.org/10.1016/j.cub.2018.01.085.)


真核生物の鞭毛は,繊維の内部に波打ち運動を駆動するモーターを持っています.モーターはダイニンタンパク質で,3頭の外側ダイニン腕(three-headed outer dynein arm,図中の薄紫色)と2頭の内側ダイニン腕(wo-headed inner dynein arm,図中の薄桃色)がATPを加水分解することで微小管の滑り運動を起こし,繊維を波打ち運動させます.
繊維自体が力発生を行う点は,細菌やアーキアのべん毛とは異なります.


ここまで見てきたように,細菌べん毛・アーキアべん毛・真核生物鞭毛は,呼び名としては同じ「べんもう」であっても,それらの構造,運動のエネルギー源,運動メカニズムにおいて,共通している部分や異なる部分があることを,お伝えできたかなと思います.


次回のテーマは考え中です.どうぞよろしくお願いいたします。

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