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べん毛① 生物と動き

ある日,道を歩いていると一匹のバッタをみつけました.私はそのバッタをみてすぐに死んでいると思いました.なぜなら,そのバッタは横向きに倒れていて動かなかったからです.

私たちは普段動いている生き物が動いていないと、死んでいる可能性を考えるようです.

その一方で,電力で動く金属製のロボットや風力で動くプラスチック製のストランドビースト(テオ・ヤンセン氏の作品)は「まるで生き物のようだ」と表現されることがあります.

これらのことから「動き」は生き物らしさを特徴づける因子の一つと言えそうです.


実際に,ほとんどの生き物が動くためのシステムを持っています.一見,動かないようにみえる植物もその細胞内には 原形質流動 と呼ばれる活発な流れを引き起こす運動システムがあります.原形質流動は植物の成長に大きく関わり,人工的に原形質流動を高速化することで植物の成長が促進された という報告もあります.(https://www.jstage.jst.go.jp/article/seibutsukogaku/99/4/99_99.4_193/_pdf)


微生物も動くためのシステムを持っています.細菌の発見者として知られるレーウェンフックは,湖から採取した水の中にたくさんの小動物(animalcules)をみつけ,それらが縦横無尽に動き回る様子は大変素晴らしい眺めである,とロンドン王立協会のHenry Oldenburg宛の手紙に書き記しています.

微生物の運動システムは非常に多様であり,進化の過程で運動システムを獲得するイベントが独立に何度も起こっていることが示唆されています
(https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/gtc.12737).

今回は微生物の多様な運動システムの中で最も研究されている「べん毛」について紹介していきたいと思います.


(べん毛②に続く)

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