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べん毛③ 細菌のべん毛

細菌はべん毛をくるくる回転させて水中を泳ぎます.

遊泳速度は数十から数百μm/秒であり,速いものでは1秒間に体の大きさの100倍近く進みます.これはヒトで換算すると時速600 kmにもなり,リニア中央新幹線の速度をも上回ります.


繊維は長さ5‒10 μmで,フラジェリンタンパク質で構成されており, 10,000‒30,000分子を使って1本の繊維を形成しています.

典型的な細菌べん毛は繊維が剥き出しになっていますが,繊維が細胞膜で包まれているべん毛(Sheathed-Flagellum)や繊維が細胞壁とその外側ある細胞外膜の間に位置するべん毛(Periplasmic-Flagella)も知られています.

サルモネラ菌とべん毛の電子顕微鏡写真


繊維を回転させるためのモーター複合体(基部体)は,細菌表面の細胞内膜,細胞壁,細胞外膜の3層に固定されており, 30種類程度のタンパク質から構成される複雑で巨大な構造物です.

基部体はその構造の巧妙さから インテリジェント・デザイン(全知全能の神が生き物を作ったという説)の例として取り上げられることもあります.

べん毛基部体の電子顕微鏡写真


基部体の回転運動はイオン(主に水素イオン,別名プロトン)の流れによって駆動され,MotAB stator complex を介した細胞内へのプロトンの流入によって C ring が回転することで,繊維を回転させます.

イオンの流れが回転の駆動力となっている点は,次回・次々回で紹介するアーキアべん毛・真核生物べん毛との相違点になります.


図は(https://www.mdpi.com/2218-273X/9/7/279)から転載していますので,詳しく学びたい方はご覧ください.


(べん毛④に続く)

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