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あそびば(千原こはぎ)

 こんばんは、はじめまして。千原こはぎと申します。
 世界中が大変なことになっているあいだに、周りの風景はすっかり春です。
 今の状況を何ひとつ予想もしていなかった冬、曜さんとふたりで「なにか楽しいことをやりたいね」と話していました。その後、御糸さちさんも引っ張り込んで、冬の企みをついに実行に移しています。普段あまり書き物をしないので手探り状態ですが、とりあえず何かしら書いてみたいと思います。

 まずは二人に倣って自己紹介を。
 短歌を初めて作ったのは中学3年生のとき。大人になってmixiの短歌コミュなどでちょこちょこ詠んだりしたのち、2010年7月初旬からTwitter上に歌を流し始めて今に至ります。無所属、無師事、Twitterで気ままに詠んだり、ネットプリントの企画をしたり、鳥歌会という歌会を主催したりしています。2015年9月にフルカラーの文庫サイズ短歌本『これはただの』(私家版)、2018年春に歌集『ちるとしふと』(書肆侃侃房/新鋭短歌シリーズ)を刊行しています。恋歌を詠むことと、短歌でなにか楽しいことをするのが好きです。よろしくお願いします。

 さて、今回のテーマは「短歌とわたしの暮らし」ですね。
 さちさんは生活のすべてが短歌だと言い、曜さんは暮らしを俯瞰したところから短歌を詠むというお話でした。ではわたしは…?と考えてみたのですが、タイミングとしては曜さんと同じくおふとんの中で詠むことが多いのですが、暮らしを俯瞰しているのかと言うと、少し違いました。わたしは生活を短歌にすることがとても苦手です。なので、日常の些細な感動や美しい風景、面白い出来事などをうまく切り取って歌にされている方が眩しくて仕方ありません。自分にできないことをやってしまうひとにはもうひたすらに尊敬と羨望の眼差しを送ってしまいます。がんばって(無理をして)そういう短歌を詠んでみることもあるのですが、できる短歌はことごとくつまらないもので、まったく心を動かされません。これではいけません。お蔵入りです。

 子どもの頃からずっと漫画家になりたかったわたしは、特に「りぼん」が好きで、少女漫画をたくさん描きました。現在の職業であるイラストレーター兼デザイナーになってからは、漫画は趣味としてちょこちょこ描く程度。さらに短歌を始めてからはイラストしか描かなくなりました。つまりわたしは、漫画でやりたかった「物語を作る」ということを短歌でやっているのだと、数年経って気づきました。
 そんなわけで、わたしの短歌とわたしの暮らしはあまり結びつかないわけです。(もちろん漫画と同じで、自身の経験や考えなどが作歌のベースになることは言うまでもありません)

 夜、一日のいろいろを終えておふとんに入ったら、スマホのメモを立ち上げて、ゆっくりと短歌を作り始めます。テーマを決めて物語を作っていったり、タイムラインから単語を拾って連作にしてみたり、題詠に挑戦したり、ときには苦手克服のため日常を短歌にしようともがいてみたり……。
 わたしの「短歌と暮らし」はそんな距離感です。暮らしのすべてを歌にできるさちさんと、暮らしを俯瞰して歌を作る曜さん、そんなふたりが眩しくて仕方ないわたしにも、いつか暮らしそのものを歌にできる日が来るといいなと願いつつ、ひとまず今は、もがきつつも楽しく短歌と暮らしていけたらいいなと思っています。
 この「水たまりとシトロン」という場が、またひとつ、楽しいあそびばとなることを祈りつつ。

あなたとは飛び込んでみたいすれ違う夜をあつめた水たまりにも


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