夏休み

7月ごろから、ストラテラが効かなくなった。

ストラテラを飲み始めてから3年が経ち、その間ほとんどずっと用量を変えていないこと
仕事でたくさんの大きな締め切りやイレギュラーがあったこと。
躁が発動し、結構派手に散財したこと。

どれが原因でどれが結果なのかはともかく、
今年の夏は3年ぶりに、ADHD感を味わって、ムラムラそわそわしながら過ごした。

この3年間、ずっと夢見てきた通りに、毎日当たり前に学校や職場に通い、
学業や仕事に専念する日々を送ってきた。
そのことが嘘のように、私は怠惰で注意散漫になった。
しょっちゅうオフィスを抜け出して遊びに行き、休憩と称しては何時間もゲームに没頭し、少し風邪気味になっただけで仕事を休んだ。

順調だったはずのプロジェクトは遅々として進まず、やろうと思っていた、やるはずだったたくさんの事が、指の隙間からこぼれ落ちていった。
職場の人とケンカした。焦るだけで何もできなかった。
ジムに通うのもおっくうになって、着替えを入れたバッグだけが家と職場を往復する日々が続いた。

好きなものがたくさんできた。
3年ぶりに世界はキラキラした欲望に溢れていて、私はその隙間をジェットコースターのように駆け抜けた。
お芝居を見たり、薄い本を買いこんだり、友達と会うために何度も遠出した。かわいい服や素敵な物が沢山あった。
読みたい本も漫画も、見たいアニメも、遊びたいゲームもたくさんありすぎて、仕事なんかしている場合じゃなかった。
たくさんの出会いがあった。いろんな楽しいことを知った。

主治医と相談して、65mgだったストラテラを75mgに増量することに決めた。
私は、働いている自分が好きだ。それは、働かないのが申し訳ないからではない。今の仕事が自体が好きだし、ずっと集中して勉強や仕事をしたいと思っていて叶わなかったので、思いっきり勉強したり働いたりできることは本当に幸せだと思う。

今日1日、妙にすっきりしてしまった世界の中でわき目もふらずに働いて、
やっぱり疲れないでたくさん仕事ができるのは楽しいなあと思った。
仕事が終わった後少し運動しようかと思える体力が残っているのが嬉しかった。

ストラテラを飲み始めたときから、ずっと薬が効かなくなるのが怖かった。
ストラテラの効果が薄れたら、世界が終わるような気がしていた。
でも、そうじゃなかった。
薬が効かなかったら効かなかったで、それなりに良いこともあった。
どちらも体験できる自分は幸せ者だなと思った。
夏休みに出会ったたくさんの素敵なものたちを、ちょっとクリアになった世界に持って帰れたらいいなと思っている。全部は無理かもしれないけど。
さようなら、夏休み。また会う日まで。


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