見出し画像

村上裕一著『ネトウヨ化する日本』(角川EPUB選書)読了


 とても幅の広いタイプの帯にあるように、「“日常系アニメ”を愛でる人々がなぜ『ネット右翼』と化すのか?」という問題意識から書かれたようだが、その“日常系アニメ”の分析部分がサブカルチャーオタク用語の洪水状態で、もう読んでて辛かった。

 なぜ、昨今の若者は右翼化するのか?その点でもっとも圧巻だったのは第4章だった。

 でも、その殆んどが安田浩一氏の渾身の取材に基づいた著書(『ネットと愛国』及び『ナショナリズムの誘惑』)からの引用なのである。
 著者本人はそれら引用に、かなり独善的な解釈を添えているだけである。

 第5章は、『カゲロウデイズ』の分析に溢れていて、読んでて「早く終われ~早く読み終わりた~い」ってのが正直な感想であった。

 そもそも『カゲロウデイズ』とそれを含む「カゲロウプロジェクト」って、果たして“日常系アニメ”という範疇に入るかも疑問である。
 仮に百歩譲って範疇問題に目をつぶってみても、単にアニメという大きなくくりでくくってみたとしても、「アニメを愛でる人々がなぜ『ネット右翼』と化すのか?」という問題意識から書き出した本なら、ご自分の解釈をずらずら書き続けるだけではなく、この作品群を愛でる人たちをネット経由でいいから取材すべきではないか?
 しかしながら、この著者は徹頭徹尾、著者ご本人の(妄想的な)解釈が書き綴られていた。
 
 ノンフィクション作家やジャーナリストが功成り名を遂げて自分の観察力や洞察力を過信し出し、取材や情報収集を怠り始めてくると、その内容は中身がなくなる。
 それでも、功なり名を遂げた作家の作品だからそれなりに売れてしまう。
 かくして、このようなノン取材で、他人の著書の引用に溢れた本が出回ってしまうのである。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?